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21世紀の「ゴジラ」のすごさと物足りなさ

初代ゴジラは「反核」と「科学者の社会的責任」を見事に描き切っていた

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

 「シン・ゴジラ」は、まさに21世紀の「ゴジラ」だった。1954年に登場した初代ゴジラとは異なる、新たな伝説を生む可能性を秘めた新しい「ゴジラ」の誕生といえそうだ。初代「ゴジラ」に思い入れのある世代としては、初代「ゴジラ」を継承する部分も垣間見えて、これもまた嬉しい。では、「シン・ゴジラ」は初代「ゴジラ」の何を継承し、何を新たに訴えようとしたのか。これから映画をご覧になる方のために、「ネタバレ」にならない範囲で、映画の感想をまとめてみたい。

誕生の起源と進化:「核エネルギー」と「遺伝子工学」

 初代「ゴジラ」は、水爆実験が誕生の起源であり、明らかに核兵器が生んだ怪獣であった。「シン・ゴジラ」は起源は異なるが「核エネルギー」(「原子力」とはあえて書かない)が原点であることは共通している。同じ「核エネルギー」であっても、2011年の福島原発事故が大きな要素として映画に反映されている点が注目である。放射線被ばく、マイクロシーベルト、半減期、汚染地域、住民避難、除染と復興、放射性廃棄物・・・「シン・ゴジラ」に登場するこれらのキーワードは、初代ゴジラには見られなかったものだ。一昨年のハリウッド版「GODZILA」も原発を扱っていたが、このあたりが「21世紀ゴジラ」の特徴といっていいだろう。

 しかも、「シン・ゴジラ」は、

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