地球規模の大災害であると同時に地球の健康を守る自然現象でもある
2016年08月12日
日本ではあまり報道されないが、欧米では山火事のニュースが取り上げられることが多い。日本の山火事と比べて規模が極めて大きく、鎮火までに月単位の日数がかかることが珍しくないからだ。当然、人家に被害が及ぶこともある。要するに他の自然災害と並んで広範囲に影響を与える災害なのだ。それらを示すデータを紹介すると共に、それが環境や二酸化炭素問題に及ぼす影響について、地球科学者の観点から私見を述べたい。
最近一番大きな山火事は、3カ月前にカナダ・アルバータ州のフォートマクマレー(Fort McMurray:オイルサンドの街として知られる)郊外で出火したものだ。出火後1週間ほどで2400軒もの建物が焼失し、10万人近くが避難する騒ぎになった。最終的に5900平方キロメートル(大阪府と奈良県を合わせたより広い)が燃え、鎮火までに2カ月以上もかかった。経済的損失は1兆円近いと推定され、カナダ史上最悪の災害となっている。
カリフォルニアの複数の山火事も最近ニュースになった。その一つは大都市ロサンジェルスの直ぐ北の森林地帯で起こり、東京23区の4分の1以上の面積が焼失する規模となったため、州知事が非常事態を宣言する騒ぎになった。
地球科学の観点から山火事を捉えると、延焼しやすい条件は高温乾燥だ。大陸では夏の高気圧がちょっと居座っただけで高温乾燥となるから、世界規模でみると山火事が夏(北半球では5-9月)の年中行事となってしまうのである。実際、私がアラスカに5年間住んでいた時、雪融けが終わり毎年5-6月になると大規模な山火事が数カ所で何日も燃え続け、夕日が煙で陰ることすらあった。
米国の統計によると、今世紀に入ってから米国内で年平均7万件以上の山火事が発生し、年平均2万6000平方キロメートル(四国の面積より広い)が焼失している。それだけでも大きな被害だが、年々人家が郊外地域に広がっているために、消火の必要性が高まっているのが問題となっている。例えば山火事の消防コストだけで毎年2兆円近くにのぼり、20年前の4-5倍(物価上昇を考慮しても倍以上)となっている。
欧州は米国よりも人口密度が高く、初期消火によって延焼を防止しやすい。それでも、例えば
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください