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北朝鮮の核の脅威にどう対処すべきか

北東アジア6カ国で信頼外交を進めよ

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

 2016年9月9日、北朝鮮が5回目の核実験を行った。地震マグニチュードで5.3、爆発規模はTNT火薬換算10キロトン以上、とこれまでで最大の規模であったと推定されている。その数日前には、潜水艦からのミサイル(SLBM)発射実験にも成功した、と報道されており、北朝鮮の核兵器能力は、残念ながら着実にその威力を増していることが明らかになった。報道では、さらなる核実験も準備されているという。果たして、国際社会、そして日本を含む周辺国はどう対応すればよいのか。

「外交の道具」を超えた北朝鮮の核開発

 5回目の核実験が行われる前から、米国の専門家の間では、北朝鮮の核開発は既に「単なる外交の道具」の域をこえ、「(米国にとって)軍事上現実に機能し得る核兵器プログラム」に近づきつつある、との評価がされていた(2016年7月13日のニューヨーク・タイムス紙)。今回の核実験後、北朝鮮政府声明で特に注目されたのは、「核弾頭(nuclear warheads)」と「標準化(standardization)」という言葉であった。これは、弾道ミサイルに核弾頭を装備することができる、いわゆる「小型化」に成功した、との意味をもつ。

北朝鮮の核実験についてのニュース映像を流す街頭のテレビ画面 拡大北朝鮮の核実験についてのニュース映像を流す街頭のテレビ画面

 これが事実かどうかは今後の分析を待つしかないが、現状を放置すれば、それが現実のものとなるのにそう時間はかからない、というのが専門家の評価だ。北朝鮮情勢に詳しい米ジェフリー・ルイス博士は「北朝鮮が20発程度の核弾頭を所有しており、今後も増産する可能性が否定できない。もし何もしなければ韓国、日本だけではなく米国にとって深刻な核の脅威となる日は、これまで推定したよりも早く訪れるだろう」(2016年9月9日、Foreign Policy)と述べている。

制裁や抑止力の拡大はかえってリスク

 これに対して周辺国、国際社会がとった対応は、これまで以上の「制裁」と、米韓の軍事威嚇行為などで圧力をかけ続ける、という政策であった。今年1月にあった4回目の核実験後、米韓合同軍事演習ではB52戦略爆撃機の飛行演習が展開されたが、この制裁や圧力に頼る政策に限界が見え始めているのは、前回も述べた。

米韓合同軍事演習に参加した米海軍の強襲揚陸艦ボノム・リシャール=東亜日報提供拡大米韓合同軍事演習に参加した米海軍の強襲揚陸艦ボノム・リシャール=東亜日報提供
 問題は、この制裁や圧力のみの対策が不十分だとして、一層の抑止力(軍事力)強化を呼び、それがさらに地域の緊張を増加させる恐れである。すでに韓国政府は今年5月、米国との定例会議で核兵器の「共同管理」に言及した、と報じられている(朝日新聞、2016年9月14日)。米国側は当然のことながら賛同しなかったが、韓国内では、核武装を支持する世論も広がっており、こういった軍事力強化による対応を求める声は強まるだろう。

 先日、オバマ政権が「核の先制不使用」政策を採用することを検討していると報じられたとき、日本と韓国がこれに反対したのも、こういった「拡大核抑止」の信頼性を堅持したいという両政府の表れであろう。しかし、抑止力強化の方向は、北朝鮮をさらに軍事的に挑発するのみならず、肝心の日韓、日中、米中間の関係にも緊張をもたらす恐れがある。北東アジア全体に軍事的緊張が増すリスクも考慮にいれなければならない。

信頼外交の可能性は?……NAPCIへの期待

 制裁や軍事力強化だけでは解決が難しいとすれば、やはり根本的な対応策は「信頼醸成」と「非核化への対話」である。この点で、注目すべき韓国主導の動きが、「北東アジア平和協力構想(Northeast Asia Peace and Cooperation Initiative: NAPCI)」である。 ・・・続きを読む
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筆者

鈴木達治郎

鈴木達治郎(すずき・たつじろう) 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授。1951年生まれ。75年東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。マサチューセッツ工科大エネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、電力中央研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授などを経て、2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月より現職。またパグウォッシュ会議評議員を2007~09年に続き、2014年4月より再び務めている。

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