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日本の象牙市場を閉鎖せよと簡単には言えない理由

ワシントン条約-市場閉鎖と資源管理、どちらが有効かを考えるときだ

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

アフリカゾウの生息域(IUCNサイトから)
http://maps.iucnredlist.org/map.html?id=12392
 2016年9月24日から南アフリカのヨハネスブルクでワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、以後英語略称CITESと表記)の締約国会議が開かれた。今回は象牙取引が注目され、一般メディアでも報道されたが、必ずしも正確な情報が伝わっていないように感じる。何が問題になっているのかを説明し、我々はどうすべきかを考えたい。

 アフリカゾウが象牙のために乱獲されたのは周知の通りだ。現在では個体数が比較的多い国と依然として乱獲が進んでいる国がある。前者はジンバブエやナミビアなどで(参考) 、CITESの附属書II、つまり象牙の輸出が許可制である。ただし現在、象牙の国際取引は事実上禁止になっている。後者はケニアなどで、附属書I掲載、つまり国際商取引が原則禁止されている。

 この数年間でケニアなどでの密猟と主に中国での密売が増えたといわれる。そのケニアで今年4月、8000本の象牙が摘発焼却された。

 CITESは国際取引の規制をする条約である。各国の象牙市場をなくせばよいと考え、今回は密猟や違法取引を助長している国の国内市場閉鎖を勧告する決議が提案され、全会一致で決議された。9月1日から10日までハワイで開催された国際自然保護連合の第6回世界自然保護会議では合法的なものも含めて象牙国内市場閉鎖を求める動議が可決されている。どちらも従う法的義務はない。

 報道の多くは、中国と米国は自国の市場閉鎖に賛成で、日本が反対して孤立していると説明しているようである。この問題は、経済価値のある絶滅危惧種の保全方法を考えるうえで、典型的な事例といえる。

 ちなみに、日本国内で全形象牙を売買するには登録が必要だ。規制以前から所蔵している全形象牙も登録できる。詳しくは自然環境研究センターに問い合わせるとよい。

 アフリカゾウなどの保護には二つの方法がある。市場を合法化して適正管理する方法と、禁猟にして資源価値自体をなくすことである。どちらが有効かは

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