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動物はなぜ空を飛ぶようになったのか

昆虫・翼竜・鳥・コウモリが飛んだそれぞれの理由

大谷剛 兵庫県立大学名誉教授(動物学)

 生物は海で生まれ、少しずつ陸に上がって繁栄・進化してきた。浮力の働く海で育った生物にとって、陸上は重力が目一杯かかってくる辛い環境だったはずだ。植物の細胞は細胞壁というしっかりしたもので支えられているので、「上陸」という進化イベントでは常に植物が先をいっていた。進化の主導権が、細胞壁のない細胞でできている動物に移ってきたのは、動物が歩行肢という「重力克服パーツ」を手に入れてからである。その中から空中に進出する動物が出てきた。彼らはなぜ空を飛ぶようになったのかを今回は考えてみたい。

拡大日没した後、ねぐらから飛び立つオガサワラオオコウモリ=小笠原・父島で、恒成利幸撮影

 脊椎動物の中で、前肢を使って空中を飛んでいるのは、爬虫類の翼竜と恐竜の子孫といわれている鳥類と哺乳類のコウモリである。この3グループがなぜ飛んだかという大胆な仮説は、昆虫が専門の大谷(2005)が『昆虫―大きくなれない擬態者たち』(2005) で唱えた。翼竜の出現は今から2.2億年前の三畳紀後期から6500万年前の白亜紀後期であり、始祖鳥は1億5000万年前のジュラ紀後期、、コウモリ類は5200万年前の始新世にさかのぼる。この3グループより早く空を飛んだ動物がいる。4億年前の昆虫類である。

 その原因は、昆虫の出現が脊椎動物より早かったからだけでなく、の身体が軽かったからと考えられる。軽いと、風が少し強く吹いただけで、「飛んだ」のか「飛ばされた」のかわからなくなる。どちらであっても敵の目から逃げおおせれば、OKである。昆虫は小さいので、とにかく大きな動物から餌として狙われる。他に飛ぶ動物がまったくいなかった4億年前、4枚の翅を持った昆虫は空中に「逃げる」ことが出来たので、多くの脊椎動物は空を見上げて地団太踏んだに違いない。

 昆虫と同様に「空中に逃げる」脊椎動物を考えると、「滑空者」は結構いるものである。まず、魚類のトビウオ類。風向きが良ければ100 m 以上も滑空できる。とくに魚食魚に追いかけられたときは遠くまで滑空する。静止画では胸鰭(びれ)だけで飛んでいるようにイメージしたが、先日、Uチューブで実際の映像を見たら、尻鰭も広げていて(トビウオの種名は不明)、海面が近づいてくると、胸鰭と一緒に4枚羽で羽ばたいていた。まるで昆虫のようだった。

拡大フィリピンのダバオで「ハンボボガン」と呼ばれているトビトカゲ=ハウスオブジョイ提供

 両生類では滑空とまではいかないが、トビアマガエル類が両手の指の膜を目一杯広げて落下のスピードを落としていく。爬虫類ではトビトカゲが特別な肋骨製の翼を広げて滑空する。トビヤモリはトビアガエルと同様、指間膜をひろげて滑空するが、トビヘビは身体全体を扁平にして枝から枝へと飛び移る。

 哺乳類では、 ・・・続きを読む
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筆者

大谷剛

大谷剛(おおたに・たけし) 兵庫県立大学名誉教授(動物学)

兵庫県立大学名誉教授、神戸女学院大学非常勤講師。1947年、福島県生まれ。東京農業大学卒業後、北大大学院に進み、(有)栗林自然写真研究所、(財)東京動物園協会を経て、兵庫県立人と自然の博物館と兵庫県立大学を2013年に定年退職。専門は昆虫行動学。『ミツバチ』(偕成社)、『昆虫のふしぎ─色と形のひみつ』(あかね書房)、『昆虫─大きくなれない擬態者たち』(農文協)など。

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