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ゲノム編集と人類進化

早い、安い、簡単な技術が何をもたらすのか

瀬川茂子 朝日新聞編集委員

 政府の総合科学技術イノベーション会議や日本学術会議で、「ゲノム編集」技術の取り扱いについて検討が続いている。中国でヒトの受精卵にこの技術が使われたことがきっかけで国際的な議論が始まり、日本でも検討が始まったわけだが、今までの技術とどう違うのか、なぜ改めて騒ぐ必要があるのか考えてみたい。

 ゲノム(全遺伝情報)は、あらゆる生物が基本設計図として備えている。ゲノムを構成するのは、4種類の文字にたとえられる「塩基」の配列。文章の編集作業のように、塩基配列の文字を狙い通りの場所で改変する技術が、ゲノム編集だ。

拡大ゲノム編集のしくみ

 これまでも「遺伝子組み換え作物」や「遺伝子治療」は存在した。受精卵の遺伝子改変で、のぞましい形質をもつ「デザイナーベビー」ができるかもしれないという話もあった。そうした技術に伴う社会、倫理的な課題もさんざん議論されてきたではないか、と思われるかもしれない。

  従来の技術と何が違うのか。最大の違いは、「狙い通り」の場所で改変できること。従来法では、狙い通りの場所での改変はたいへんむずかしく、非常に低い効率でしかできなかった。しかも従来技術より圧倒的に簡単で、早く、安く使うことができる。

  たとえば、これまで特定の遺伝子を壊したマウスを作るのに1年以上かかっていたが、1カ月でできるようになるという具合だ。微生物、植物、動物とあらゆる生物に応用でき、複数の遺伝子を同時に改変することもできる。このインパクトはとても大きく、生命科学に「革命」が起こっているとさえいわれる。

 応用の可能性はとても広い。たとえば、 ・・・続きを読む
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筆者

瀬川茂子

瀬川茂子(せがわ・しげこ) 朝日新聞編集委員

1991年朝日新聞社入社。大阪本社科学医療部次長、アエラ編集部副編集長などを務める。共著書に「脳はどこまでわかったか」(朝日選書)、「iPS細胞とはなにか」(講談社ブルーバックス)、「巨大地震の科学と防災」(朝日選書)など。

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