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木質バイオマス発電はどこへ行く?

見失いたくない環境貢献や山村振興への道筋

米山正寛 森林文化協会事務局長補佐

 木質バイオマス発電が、ここに来て広がりを見せ始めている。2012年にスタートした再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)では、急増した太陽光発電が注目を集めてきたが、国内に豊富な森林から燃料を得られる木質バイオマス発電もFITの対象となっている。そして急激な広がりの理由には、FITによって計画された大規模施設(おおよそ発電容量2000kW以上)が昨年から今年にかけて次々と稼働を始めたことが挙げられる。また、2015年の見直しで買い取り価格が上がった小規模施設(おおよそ発電容量2000kW未満)も設置が増えていきそうだ。発電量が天候に左右されるからと、大手電力会社に受け入れを嫌われている太陽光発電や風力発電と違い、木質バイオマス発電は石炭や液化天然ガス(LNG)と同様、燃料の木さえあれば安定して発電できる火力発電の一種だから、電力会社の受けも悪くない。

70カ所を新規認定

間伐材は細かなチップにして燃やされる拡大間伐材は細かなチップにして燃やされる
 日本の森林は国土の約3分の2の約2500万haを占めるが、約1000万haある人工林には手入れが不十分な林も多い。そうした林にあって使われてこなかった未利用材(間伐材や放置材など)の用途拡大が、森林の利活用の上では急務と捉えられてきた。そこで、これを発電用の燃料にしようと、FITのスタート時から未利用材は買い取り価格が1kW時当たり32円と、他の一般材(24円)やリサイクル材(13円)と比べて高めに設定された。この価格でも、小規模施設は大規模施設に比べて不利だと指摘されたため、2015年度から2000kW 未満は40円と、さらに買い取り価格が高くなった。

 経済産業省の資料(2016年6月末現在)では、未利用木質バイオマス発電として新規にFIT認定を受けた施設は70カ所で、設備容量は合計約850万kWにのぼる。そのうち、これまでに導入された施設は29カ所、約55万kWとなっている。導入済みの値は、1年前(2015年6月)で20カ所、約46万kW、そして2年前(2014年6月)には4カ所、約1万3700kWにすぎなかった。施設と設備容量の増加は、FIT制度ができてすぐに計画された施設が動き出した昨年から顕著に表れている。例えば、宮崎県日南市では2015年4月から、王子製紙の日南工場において、発電能力2万5000kWの新しい木質バイオマス発電設備が稼働し始めた。

増える燃料需要

間伐材などを燃料として、宮崎県日南市で稼働する木質バイオマス発電所拡大間伐材などを燃料として、宮崎県日南市で稼働する木質バイオマス発電所
 こうした木質バイオマス発電設備が増えれば、当然、燃料としての木の需要も増える。林野庁が今年9月に発表した昨年(2015年)の木材需給表で、燃料材の需要は410万㎥で、前年(2014年)の294万㎥からは4割増になっている。それに先立つ8月に発表された木質バイオマスエネルギー利用動向調査(速報)では、間伐材や林地残材等の未利用材に由来する木質チップ燃料の利用量は2014年の72万7700t(約160万㎥)から、2015年は123万1400t(約271万㎥)に1.7倍増加していた。

 北海道紋別市では今年中にも、住友林業などが出資する木質バイオマス火力発電所(発電能力5万kW)が動き始める。近く運転を開始する予定の施設は他にも多く、今年以降の燃料需要は、さらに伸びていくことだろう。そうなると年間600万㎥、さらには800万㎥という需要が生じると見込まれる。国内の森林で毎年生じる未利用材の量は、これまで約2000万㎥という数字が使われており、それを前提にすると、こうした需要に対しても、まだ十分な供給余力があることになる。しかし、本当にそれだけの量が山から出てくるのだろうか。搬出にかかる手間やコストを考えると、実際には難しそうだ。 ・・・続きを読む
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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 森林文化協会事務局長補佐

公益財団法人・森林文化協会事務局長補佐(学術、出版)兼「グリーン・パワー」編集長。朝日新聞の科学記者を経て現職。とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せ、取材活動を重ねてきた。森林文化協会は、「山と木と人の共生」を基本理念として1978年に設立された朝日新聞創刊100周年記念の財団。
森林文化協会公式サイト

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