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消費者も店もメーカーも怒る「新食品表示制度」

「輸入又は国産」という究極のあいまい表示

唐木英明

 ソーセージ、みそ、カップ麺などすべての加工食品は表示すべき項目が義務付けられている。名称、原材料、内容量、賞味期限、保存方法、製造者などである。原材料については原産地により品質に差がある緑茶、こんにゃくなど22食品群と、安価な中国産が国産品を圧迫した経緯があるうなぎのかば焼きなど4品目だけに原産地表示を義務付けているが、それは全体の1割強である。

 そもそも原産地がどこであろうと食品の安全は食品衛生法で厳しく守られているので表示の必然性は低い。だが、国産品を選びたい、特定の国の食品は嫌だという声と、国産品の消費拡大という政策上の理由から、表示の拡大が検討されてきた。

 しかし加工食品の製造事業者にとって、それは困難だった。商品を通年で供給するために原産地を頻繁に変えるのだが、そのたびに表示の変更が必要になる。間違いがあれば謝罪・回収・廃棄という損失が発生する。海外では必然性がない原料原産地情報を記載する習慣がないため、情報の入手が難しいなどの理由である。

誤解を誘う3つの禁じ手

 ところが農水省・消費者庁共催の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」(以下「検討会」)は、一部の委員の強い反対を押し切って「すべての加工食品の原料原産地表示」を不可解な形で実施することを決めた。

拡大現在はこのように表示されているが…
 原料原産地表示は国別重量順表示を基本としている。国別に重量の割合が高いものから順に国名を表示するもので、原産国が3か国以上の場合には3か国目以後を「その他」と記載する。例えば「原材料名 豚肉(カナダ、アメリカ、その他)」という表示で、どの国の豚肉が使われたのか、どの国が多いのかが読み取れる。しかし、前述の理由でこの形で表示を拡大することは難しい。「検討会」は、事業者が対応できる形にするため、これまで国が認めなかった3つの「禁じ手」を採用した。

拡大新しい制度ではこんな表示もできる
 第1は「可能性表示」である。これは使用する可能性がある複数国を、使用が見込まれる重量割合が高い順に「又は」でつなぐ方法であり、過去の実績に基づいて表示される。例えば「原材料名 豚肉(カナダ又はアメリカ又はその他)」という表示であり、過去にカナダ産が最も多く使われていたが、現在はアメリカ産、あるいはその他の国のものが最も多い「かもしれない」という「あいまいな表示」である。

拡大このように表示することも可能だ
 第2は「大くくり表示」である。これは ・・・続きを読む
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筆者

唐木英明

唐木英明(からき・ひであき) 東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長

1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て、東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを務めた。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。著書「不安の構造―リスクを管理する方法」「牛肉安全宣言―BSE問題は終わった」など。

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