副学長の意識改革と事務職員の地位向上を目指せ
2017年01月05日
拙稿「『忙しさ』に自滅する日本の大学」に、日本の大学の教員が、口をそろえて「雑用が多すぎて、教育や研究に十分な時間がかけられない」と言っていることを書き、この問題の解決の重要性を指摘した。実際、アメリカの教員が、日本の教員よりたっぷり時間をかけて教育や研究に取り組んでいる背景として、教員のサポート体制の違いをデータで示し、日本の大学を国際標準に近づける必要性を述べた。
そこで書いたように、アメリカの大学には、日本の大学よりもはるかに多数の事務職員が雇われていて、教員の教育や研究のサポートをしている。シカゴ大学やスタンフォード大学には、正規教員の5倍近い数の事務職員がいる。日本では、国立大学でも、せいぜい教員と同数程度である。
アメリカの大学の事務職員の数は、実は、元々ここまで多かったわけではなく、過去25年間で2倍以上に増えているという統計がある。このアメリカの大学における事務職員の増加は、高等教育委員会や国から大学に求められる種々の規則の制定や遵守への対応、外部評価への対応、学生やその家族からの多様なサポートの求めへの対応、IT化などによる教育システムの変化への対応などが原因になっていると言われている。
正規の教員以外の教育・研究スタッフを含むと、教員数と事務職員数の比率は、日本の国立大学とあまり変わらなくなるが、正規の教員以外は「雑用」の負担は少ないと思われるので、正規の教員のみで数えると、事務職員数は教員数の3〜4倍程度いると考えるのが妥当であろう。ちなみに、MITの総職員数は、この10年間で11,100人から12,400人へ、12%増えているが、正規の教員はあまり増えていない。
事務職員の増加に関しては、批判もある。アメリカにおける学費の高騰が大きな問題になっているが(拙稿「アメリカの私立大学の学費が高い理由」)、事務職員の増加がその原因の一つになっており、組織と業務の効率化によって、事務職員の数はもっと減らせるのではないかということも言われている。
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