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トランプ氏へのもう一つの懸念

環境問題に限らず地球科学全般が被るダメージを恐れる

山内正敏

 1月20日にトランプ氏が米国大統領に就任する。

拡大演説を終え、両手の親指を立てて成果を誇るトランプ次期米大統領=2016年12月1日、米インディアナ州インディアナポリス、五十嵐大介撮影

 彼の当選が決まって、地球科学者の間では不安が渦巻いた。その理由は、トランプ氏が二酸化炭素の排出抑制に否定的な立場であるからだけではない。ビジネスマン感覚で地球観測をスリム化して、世界を先導してきた米国の地球科学が大きなダメージを被る恐れがあるからだ。現に地球観測のすべてを米国航空宇宙局(NASA)から米国海洋気象局(NOAA)に移す構想を打ち出して、後述するように、性質の異なる観測のいずれか(あるいは両者)が削減される可能性がかなりある。不安になるのも当たり前なのだ。

今までの米国の貢献

 第二次大戦後の70年間、米国は、世界のリーダーであると自覚を持ってきた。それは、時には「余計なおせっかい」として民族自決主義との対立や、米国独自の規範の押し付け、世界規格(メートル法など)への抵抗などの問題も起こしたが、こと科学の世界となると、米国の貢献は非常に大きい。なにしろ予算規模が圧倒的に大きいのだ。科学に関係する省庁の科学研究予算だけでも非常に多いのに加えて、Defence(国防軍とか米軍と訳されるが、前回の記事「防衛省の基礎研究支援は日本では禁じ手だ」に書いた通り、軍事以外の災害から国民・国土・財産を守ることも含む)予算を通した科学予算もこれまた膨大だからだ。

 もちろん、これら科学への貢献の根底には、その応用による利益の膨大さを見通した投資という面もあろう。高校理科4科目(物理、化学、生物、地学)のうち、地学を除く3科目に関連する基礎科学が、最終的に巨大市場につながっている事実を考えれば、確かに投資ではある。しかし、それら基礎科学の成果は論文を通して全世界に等しく貢献するものであって、米国だけの利益を目指すものではない。たとい、米国が応用開発でやや優位になるかも知れないことを考え合わせても、第二次大戦で研究基盤を壊された欧州に代わって基礎科学をリードしてきた貢献は賞賛に値する。

 米国の科学に対する貢献はそれだけではない。米国の ・・・続きを読む
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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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