性善説では対処できない、「ひたすら禁止」でも先がない
2017年01月30日
プロ将棋の「スマホカンニング疑惑」。第三者委員会から「証拠なし」とする報告が出たが、棋士の間には疑心暗鬼があったのでは、というところまで書いた。
蔓延した疑心暗鬼を土壌に噂が広まり、少数の棋士がターゲットになると、仲間内で口に出しただけでも、この疑惑にコミット(関与)することになる。メディアの取材に応じたりすればなおさらだ。するとどんな些細なことも不正を暗示するように見えてしまう。
ある信念に対してコミットメントが深いと、同じ「証拠」も違って見える。これは認知心理学の常識だ。新たな証拠は(客観的には反証であっても)それまでの信念を固める方向にしか働かない。
さらにもう一点、プロ棋士たちは天才頭脳集団だが、統計学や確率論に必ずしも明るくはない。それが「証拠」の解釈をさらに偏らせた可能性がある。
第三者委は、棋士と将棋ソフトとの指し手の一致率(不正の根拠 3)についても分析している。疑わしいとされた対局を中心に「10回のうち何回、指し手が一致するか」を調べた。だが結果は分析ごとにばらつき、同程度の一致率は他の棋士でも認められた。また「プロなら指せる手で、自力によるとしても不自然ではない」という他棋士の証言もあり、「不正を認定する根拠に用いることは著しく困難」と判断した。このあたり、読者の中にも「?」となった人がいるかも知れない。
筆者はこの件に興味を惹かれ、自分で簡単な数値シミュレーションを行ってみた。
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