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潮の満ち干の説明は誤解ポイントだらけ

ガリレオもニュートンも間違えた? それでも気になる楽しい話題

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

潮干狩り。干潮の時間帯になると浜は人で埋め尽くされる=2015年5月4日、横浜市金沢区、井手さゆり撮影
 「潮の満ち干はなぜ起こる?」は定番の質問である。子ども向けの科学書にはたいてい載っている。ところが、その答えを読んでもわかった気がしない。実はこれは相当な難問で、かのガリレオが間違え、ニュートンが正しい考え方を示したものの不十分で、フランスの数学者ラプラスが動力学という新たな発想で理論化を試みたが、結局、「世界の海の現実の潮汐に直接関係づけることができるような、純粋に動力学的な理論を考え出した人は誰もいない」(エドワード・クランシー『潮汐の話』)ままだ。という具合に難しい話なのだが、多くの人の知的好奇心を刺激する楽しい話題でもある。朝日新聞の科学面に解説記事を書いて、そう実感した。

 潮の満ち干は月の引力が原因で起こると説明される。その説明には、たいてい、絵が添えられている。月と地球があって、地球の海は月側とその反対側が盛り上がっている。

 例として気象庁の「潮汐の仕組み」のページを見て欲しい。説明文は以下のようになっている。

海面の水位(潮位)は約半日の周期でゆっくりと上下に変化しています。 この現象を「潮汐」といいます。
潮汐が起こる主な原因は、月が地球に及ぼす引力と、地球が月と地球の共通の重心の周りを回転することで生じる遠心力を合わせた「起潮力」です。 地球と太陽との間でも、同じ理由でやや小さい起潮力が生じます。

 これを読んで理解できますか?これではわからないと考えて書いたのが2017年2月5日付の「潮の干満、なぜ2回 月に振り回される遠心力、カギ」という大型記事だ。

 潮の満ち干を起こす力を上記の気象庁ホームページでは「起潮力」と呼んでいるが、天文学者はこれを「潮汐力」と呼ぶ。こうした用語の不統一がわかりにくい問題をますますわかりにくくしている。そもそも「潮汐」という言葉もあまり馴染みがない。「潮位が約半日の周期で上下に変化する現象」なわけだが、普通に海面が上下している現象と区別がつきにくい。説明を良く読むと、ポイントは「半日の周期」にあることがわかる。半日周期の変化のことを潮汐と呼ぶわけだ。満潮も干潮も日に2回あるので、確かに半日周期で海は近づいたり遠ざかったりしている。

 なぜそういう動きが起こるのか。月のせいである。

 引力は、遠ざかれば遠ざかるほど弱くなる。この事実だけから潮汐力を説明することは可能である。月の側の海面>その下の地面>月と反対側の地面>その海面、という順で月から遠ざかっているので、この順で引力も小さくなる。月の側を考えると、海の方が地面より強く引っ張られるので海は持ち上がる。反対側を考えると、地面の方が強く引っ張られるので海は取り残される。結果としてこちら側の海も盛り上がる。

 この説明に初めて触れたとき、私はいたく感動した。こんなに簡単に潮汐力が説明できるのか、と。この説明をもっと広めるべきではないかというのが、新聞に記事を書こうと思い立った動機だった。七面倒くさい遠心力など考えずに、重力だけで説明できることをたくさんの人に知ってもらいたいと思ったのだ。

 ところが、

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