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「自分で考え、自分で進める」が大学活性化の道

同調圧力に屈しない「多様な価値観」と「明確な評価基準」を

古井貞煕 豊田工業大学シカゴ校 (TTIC) 学長

 日本はもたれあい社会で、「ムラ社会」である。日本の満員電車で、だまってお尻で他人を押して電車に乗り、だまって他人を押して降りる風景は、極めて異常である。ぞっとする。

 日本人は、平均的に、自分の考えを明確に伝えることが苦手である。携帯で、絶えず友達の気持ちを気にしているのは、膨大な時間の無駄遣いである。日本では、「思いやり」と「協調性」と「自己犠牲」が強調される。集団の中で出過ぎないようにすることがよしとされ、集団の価値が支配する社会になっている。個人の価値が発揮しにくい。日本で起こる殺人事件の6割が身内の間で起きている。社会が内向きにできていて、その中での争いやもめ事が多い。

 同調圧力(peer pressure)の強さが、日本人をがんじがらめにしている。同じでなきゃいけない、違ってはいけない、とても苦しい社会になっている。その中で、自由に輝いている人、リベラルに光っている人でいるには、覚悟がいる。そういう仲間を作ること、空気を読んでも、空気に合わせるのでなく、自らの責任で発言する勇気が求められている。

大学と社会の現状

拡大大学生向け就活セミナー。「服装は自由」「軽装でOK」と案内しても、ほぼ全員がスーツ姿で参加する

 大学が、若者の過半が進学する高等教育機関になり、えり好みしなければ、誰でも容易に入学できるようになった。その結果、学習意欲や基礎学力に乏しい多数の若者が大学に入っている。

一方、社会では、雇用が安定し昇進も期待できる「正社員」と、不安定かつ雑多な仕事を続けざるを得ない非正規の社員との格差が厳然として存在する。前者を教育するエリート大学と、後者を教育しなければならない非エリート大学という現実があり、その間は連続的である。

「ほどほど大学」も役立てばよし

 この現実を認めた上で、各大学は立ち位置を自ら確認し、その目的に合った教育(職業訓練を含む)を行う覚悟が必要になっている。日本の大学が、みんな同じような大学を目指すのでなく、現状を直視して、それぞれの役割を意識した、身の程に合った大学にならないと、日本の大学は「自滅」する。(拙稿「日本の大学の世界ランクはなぜ落ちる一方なのか」「『忙しさ』に自滅する日本の大学」)

 12年前の、2005年の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」には、次のようなことが書かれている: ・・・続きを読む
(残り:約2300文字/本文:約3234文字)

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筆者

古井貞煕

古井貞煕(ふるい・さだおき) 豊田工業大学シカゴ校 (TTIC) 学長

豊田工業大学シカゴ校(Toyota Technological Institute at Chicago=TTIC) 学長。1968年東京大学卒。工学博士。NTT研究所を経て、1997年より東京工業大学大学院計算工学専攻教授。2011年同名誉教授。2013年より現職。音声認識、話者認識、音声知覚、音声合成などの研究に従事。科学技術庁長官賞、文部科学大臣表彰、NHK放送文化賞、大川賞受賞、紫綬褒章受章、文化功労者。種々の学会から功績賞、業績賞、論文賞、Fellowなど受賞。国内外の学会の会長、学会誌の編集長などを歴任。

 

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