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受精卵のゲノム編集に黄色信号

着床前診断と遺伝子改変の関係を米科学アカデミーはどうみているか

瀬川茂子 朝日新聞編集委員

 有力な科学者たちがつくる米科学アカデミー(NAS)が、「ゲノム編集」の医学的利用について報告書を2月14日に発表した。報告書は、精子や卵子、受精卵(生殖系列の細胞とよばれる)にゲノム編集を使う可能性や条件に踏み込んでおり、世界に衝撃を与えた。もちろん厳しい条件をつけているが、これまでの一線を越える一歩を人類が踏み出す日がいずれ来ると予感させる内容になっている。

拡大ゲノム編集を利用した遺伝病予防のイメージ
 生殖系列の細胞の遺伝子は次世代に受け継がれる。そこが一代限りの体の細胞とは違う。未知のリスクを子孫に残す可能性や倫理を考え、これまで多くの国では、遺伝子改変はしないとしてきた。NASを含めた米英中の科学者団体も、「安全性が確立していないのに生殖細胞へゲノム編集を行うことは無責任」という声明を一昨年末に発表した。それから1年余り、報告書でも「研究が必要で時期尚早」と抑えてはいる。一方、技術の進歩は非常に速い。もはやSF世界の話といっていられない。現実的な可能性になりうるとして、検討した。

 対象となるのは、合理的な治療法がない、病気の原因遺伝子に限る、数世代にわたる長期的な影響評価を行うなど、厳しい条件をつけている。国民が議論を尽くしたうえでという但し書きもついている。

 高いハードルに見えるが、本当にそうか。条件の解釈にかなり幅がありそうなことに注意する必要があるだろう。たとえば、「合理的な治療法がない」つまり「ゲノム編集のほかに方法がない」という判断は、専門家が科学的に決めることができそうにみえる。しかし、そうではない。 ・・・続きを読む
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筆者

瀬川茂子

瀬川茂子(せがわ・しげこ) 朝日新聞編集委員

1991年朝日新聞社入社。大阪本社科学医療部次長、アエラ編集部副編集長などを務める。共著書に「脳はどこまでわかったか」(朝日選書)、「iPS細胞とはなにか」(講談社ブルーバックス)、「巨大地震の科学と防災」(朝日選書)など。

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