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ニュートン「倒産」の舞台裏

科学雑誌Newtonは黒字、いったい何故こんなことに?

伊藤隆太郎 朝日新聞記者(科学医療部)

 科学ファンや愛読者から、嘆く声がもれている。「売れていなかったのか……」。科学誌「Newton」を発行するニュートンプレスが、民事再生手続きを申請した。

 かつて書店には「オムニ」「UTAN」など、さまざまな一般向けの科学雑誌が並んでいた。ほかならぬ朝日新聞社も「科学朝日」を発行していた。だが、いまではいずれも休刊や廃刊に。出版不況の厳しさは増すばかりだ。

 そこに届いたニュートンプレスの悲報。「科学雑誌、冬の時代」を強く印象づけたことだろう。ところが、実情はかなり違う。実は雑誌Newtonは売れているのだ。発行元のニュートンプレスも、出版事業そのものは黒字。ではなぜ、こんな事態になったのか。舞台裏を見ていこう。

直前に前社長が逮捕

 まず、ちょっとややこしい点を整理しておく。今回、当事者は2社ある。

株式会社ニュートンプレス = 雑誌Newtonを発行
株式会社ニュートン = 雑誌Newtonの関連デジタル教材を開発

 ニュートンプレスが民事再生を申請する3日前、もう一つのニュースがあった。ニュートンの社長、高森圭介容疑者(77)の逮捕だ。ニュートンプレスの前社長でもある。

拡大ニュートンプレスが発行する科学雑誌「Newton」は、鮮やかなイラストを豊富に使った誌面が特徴だ
 警察の発表では、高森容疑者はニュートンの管理部長(69)とともに、2015年2月から16年3月にかけて、雑誌Newtonの定期購読者3人に「元本と年5%の利息を支払う」などと約束して、計1200万円を不正に預かった疑いがある。

 なぜ金が必要だったのか。iPadなどのタブレット端末で使える小中学生向け教材の開発資金だったという。

 ちなみに、ニュートンプレスとニュートンは、形式的には別会社で、資本関係はない。ニュートンを「ニュートンプレスの子会社」とした記事もあったが、正確ではないという。両社は名前の弁別が難しいので、これからは雑誌出版社と教材開発会社と呼ぼう。

デジタル展開で目論見が狂う

 前社長の逮捕で、雑誌出版社に激震が走った。教材開発会社に対する多大な貸付金があったからだ。その額、23億6000万円。教材開発を支援する資金だった。

 開発していたのは、Newtonの名を冠した理科授業用の3D教材だ。小学4年〜中学3年向けに、物理・化学・生物・地学の各分野がある。

拡大ニュートンプレスが資金を支援して、ニュートンが開発していたタブレット端末教材(紹介パンフレットから)
 たとえば生物分野の「血液のながれ」では、体中に血液を送り出す心臓のしくみを、リアルな立体画像で観察できる。心臓の断面図が表示されたり、回転させて全体をながめられたり。

 「いいものを作っていたんです。ところが売れず、資金繰りが詰まった」と、雑誌出版社の弁護士。そして悔しげな感情も込めて、付け加えた。「いまでも、いずれは『大化け』すると期待している」

 教材開発会社だけでなく、雑誌出版社も個人から資金を集めていた。未返済額は、前者が約200人に5億4000万円、後者が約300人に6億3000万円という。

 この借金返済に向けて、雑誌出版社は昨年12月から経営改善に着手していた。「このままでは事業を継続できない」。返済がとどこおっていた債権者には、分割返済を提示して理解を求めた。

 今年1月には金融機関とミーティングをもち、返済条件の変更をのんでもらった。その後、臨時株主総会を2月13日に開き、経営改善計画が認められると、個人債権者に向けた説明会の案内状を16日に送っていた。

 ところが、その翌日の前社長逮捕。任意での再生計画はこの瞬間、もろくも破綻した。

雑誌Newtonは黒字

 前社長の後を継いだ高森康雄代表(40)は、高森圭介容疑者の長男だ。「雑誌Newtonを維持・存続させることが社会的使命。会社再建に何卒、ご理解をお願いします」。2月20日、民事再生手続きの申し立て後に記者会見して、深々と頭を下げた。

拡大記者会見するニュートンプレスの高森康雄代表
 雑誌出版社では、教材開発会社ぶんも含めて、個人債権者に対する借金の元本を100%、弁済していくという。雑誌Newtonはつぶさずに、発行は継続する。いや、借金を返すためにも、Newtonは続けられるのだ。

 同社の損益計算書によると、 ・・・続きを読む
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筆者

伊藤隆太郎

伊藤隆太郎(いとう・りゅうたろう) 朝日新聞記者(科学医療部)

1964年、北九州市生まれ。1989年、朝日新聞社に入社。筑豊支局、西部社会部、AERA編集部などを経て、2016年から科学医療部。

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