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「遊び」じゃない宇宙遊泳

【ヒューストン訓練報告2】巨大プール訓練で模擬できる宇宙とできない宇宙

油井亀美也 宇宙飛行士

 2月に行った米ヒューストンでの訓練ですが、前回は訓練の重要性について主に書きました。今回は、もう少し具体的な内容と、地上での訓練と実際の宇宙での違いについて説明します。

巨大プールで宇宙空間を模擬

 船外活動の訓練は、NBLという巨大なプールの中で行います。水の中では、浮力がありますから、それを利用し水中で無重力を模擬します。簡単に浮力を使用して無重力を模擬するといいますが、これが非常に大変な作業なのです。訓練を行っている宇宙飛行士が浮力を調整することはできませんので、酸素ボンベを背負ったたくさんのダイバーが私たちの周りにいて、水中で着ている宇宙服(本物そっくりですが水中用のものです)の様々な場所に付いているポケットに、重りを入れたり出したりして浮力と重さを釣り合わせています。

拡大プールの中で無重力の空間を模擬するには、ダイバーのサポートが必要不可欠(JAXA/NASA)
 実はそれだけでなく、重心の位置とそれぞれの重りの分布を変えて、身体を回転するための力も無重力と同様になるように調整してくれています。また、水中でも宇宙で使用するのと同じ金属製の道具を使って訓練しますが、そのような金属の道具は浮力を使って無重力を模擬することは出来ませんので、ダイバーが黒衣のように道具を支えて無重力を模擬してくれます。

 ここまで大規模な施設を使い、多くの人たちが協力してくれることで、宇宙空間を模擬した訓練ができるのですが、これでも完璧ではありません。水の浮力で、宇宙服はふわふわと浮き、無重力の中にいるようですが、宇宙服の中には重力があります。ですから、さかさまになると、肩が宇宙服の中の金属部分に当たって痛いですし、逆立ちした時のように頭に血が上ってしまいます。

 また、宇宙空間は無重力かつ真空ですから、慣性の法則のとおり、動き出したものは止まらずに動き続けますが、水の中は大きな抵抗があるので、 ・・・続きを読む
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筆者

油井亀美也

油井亀美也(ゆい・きみや) 宇宙飛行士

1970年生まれ。防衛大学校(理工学専攻)を卒業後、航空自衛隊に入隊、パイロットとして活躍。2009年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入り、11年に宇宙飛行士に認定。15年にロシア・ソユーズ宇宙船に搭乗して、国際宇宙ステーション(ISS)に約5カ月間、長期滞在した。現在は、JAXA有人宇宙技術部門に所属し、後に続く大西卓哉、金井宣茂宇宙飛行士のミッション達成のための支援などに携わる。

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