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ノバルティス薬事法違反事件はどう裁かれるか

高血圧薬の研究データは改ざんされたのか? 3月16日、東京地裁判決

浅井文和

 年間1000億円を超える売上高を誇った高血圧治療薬の臨床研究で、「虚偽の記述」を問われた大手製薬企業とその元社員はどう裁かれるのか。

 スイスに本拠を置く製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバン(一般名バルサルタン)に関する論文で、データを改ざんしたとして薬事法(現・医薬品医療機器法)違反(虚偽記述・広告)の罪に問われた元社員と日本法人への判決が3月16日、東京地裁で言い渡される。

 昨年11月の公判で検察側は「社内で評価や地位を得るために、会社に有利な結論になるようにデータを改ざんした」などとしてノバルティス元社員の白橋伸雄被告に懲役2年6カ月を求刑した。法人に対する求刑は罰金400万円だった。白橋被告と法人はともに無罪を主張している。

不正な改ざんをしたのは誰なのか

 この「ディオバン臨床研究不正問題」が新聞で大きく報道されたのが4年前。「まだ裁判が続いていたのか?」と受けとめられる方も多いかもしれない。どんな問題だったのか振り返ってみよう。

拡大京都府立医科大の研究の構図
 2013年7月、京都府立医科大学は同大学の研究グループが実施したディオバンの効果を調べた臨床研究論文で「データ操作」があったと発表した。約3000人の高血圧患者を追跡調査した論文は09年に発表された。ディオバンを飲んだ患者は、他の高血圧治療薬を使った患者に比べて脳卒中や狭心症などのリスクが大きく下がったとする結論だった。

 大学の調査によれば、ディオバンに有利なように、脳卒中などを起こした患者数が操作されていた。しかし、一体だれが不正な操作をしたのかは明らかにできなかった。

 東京慈恵会医科大学が07年に英医学誌「ランセット」に発表したディオバンの臨床研究論文に関しても、同大学の調査でデータの人為的な操作が判明した。白橋被告は両大学の臨床研究で統計解析を担当していた。

 13年8月からは厚生労働省にディオバン臨床研究問題に関する検討委員会が設けられた。両大学で研究を主導した教授や白橋被告ら関係者からの聴取も行われたが、「だれが不正なデータ操作をしたのか」の真相解明には至らなかった。

 14年1月には厚生労働省が薬事法違反の疑いでノバルティス日本法人と同社社員を氏名不詳のまま東京地検に刑事告発。東京地検特捜部が東京の同社本社などを家宅捜索するなど捜査を進め、14年7月に白橋被告と法人を起訴した。

 不正なデータ操作をしたのは一体だれなのか。3月16日の東京地裁判決は、真相解明に向けての大きな節目になる。

法廷で証言された医師の関与

 検察は押収したUSBメモリーなどから削除済みのデータを復元。統計解析に使われたテータなどをもとに、京都府立医大の臨床研究でデータが操作されてディオバンに有利な論文が作られた経緯を明らかにしようとした。

 検察側は、白橋被告が「改ざんしたデータを用いて論文に掲載する図表等を作成した」と主張。白橋被告側は「意図的な改ざんではない」と無罪を主張している。

 この裁判で浮き上がってきたのは元社員の関与だけではなかった。研究に携わった医師の証言も注目すべきものだった。 ・・・続きを読む
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筆者

浅井文和

浅井文和(あさい・ふみかず) 医学文筆家

元朝日新聞編集委員。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。連載記事「患者を生きる」「がん新時代」「認知症とわたしたち」などに参画。

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