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ビジネスで社会課題を解決するシンポ

「若者は仕事を探すのではなく、仕事をつくるべきだ」へ ノーベル平和賞のユヌス氏

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 社会的課題をビジネスで解決する方法を考えるシンポジウム「ソーシャルビジネスで未来をつくろう」(朝日新聞社、九州大学主催)が2月21日、浜離宮朝日小ホール(東京都中央区)で開かれた。シンポジウムでは、私がコーディネーターを務め、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏と、小池百合子・東京都知事に、ソーシャルビジネスの可能性について話し合ってもらった。熱のこもった二人の議論をお伝えする。

パネル討論をするムハマド・ユヌス氏(中央)と小池百合子都知事(右)。左は筆者=東京都中央区の浜離宮朝日小ホール、小玉重隆撮影拡大パネル討論をするムハマド・ユヌス氏(中央)と小池百合子都知事(右)。左は筆者=東京都中央区の浜離宮朝日小ホール、小玉重隆撮影

 ――2015年に国連で決まった二つの目標、「持続可能な開発計画( SDGs)」や地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」は、いずれもビジネスの役割を重視しています。社会課題の解決がビジネスになる時代になったのだと思います。ユヌスさんは、グラミン銀行を創設されて、ソーシャルビジネスを始められた。時代がようやくユヌスさんに追いついてきたという気がするのですが、今の流れをご覧になってどう思われますか。

 ムハマド・ユヌス ユヌスセンター代表。1940年バングラデシュ・チッタゴン生まれ。チッタゴン大学で講師を務めたのちに米国留学、帰国後の83年にグラミン銀行を創設して、無担保小口融資(マイクロクレジット)を始めた。2006年、貧困撲滅の活動に対してノーベル平和賞。グラミングループは、貧しい人の生活や教育、医療などを支援する様々なソーシャルビジネスを展開している。

 ユヌス 40年ほど前にグラミン銀行を作り融資を始めました。貧しい家庭では、特に女性が直面する多くの問題がありました。そこで、ビジネスを作った。そのビジネスは、お金をもうけたいというものではなく、問題を解決するものです。投資した人には、元本だけ還元する。それが、新しいビジネスになりました。

 村を回って目にしたのは、灯油ランプしかないということでした。この技術発展の時代に、前近代的な生活をしている。日が落ちると暗く、悲しく見える。どんな技術を持ち込めるだろうかと考えて、23年前、ソーラーエネルギーを家庭に導入する新たなビジネスを始めました。

 最初は「こんな高いものは必要ない」と受け入れられませんでした。月に5、6台のソーラーシステムを売るのも難しかった。でも20年後には、1日に1000台以上が売れるようになった。人々によりよい選択肢を提示したからです。月々灯油に使っているお金を払えば、ソーラーシステムを手に入れられます。「3年間、同じ金額を毎月払ってください。いままで灯油に使ってきた以上のお金を払う必要はありません」と言いました。3年後にはすべて無料になります。

 それを見て、ソーラーシステムを売る多くの企業が生まれ、バングラデシュは送電網につながっていない発電システムでは世界1、2位を争うようになりました。携帯電話も、テレビも使えるようになった。再生可能エネルギーが標準となったのです。

 これは、われわれが作り出してきた数多くのソーシャルビジネスの一例です。どのビジネスも大変よくやっていますが、医療については特に自負しています。

 ――小池知事といえば、環境大臣時代の「クールビズ」が有名です。社会課題の解決にビジネスが役立ったソーシャルビジネスの良い例ではないかと思います。行政がソーシャルビジネスにどうかかわるか、持続可能なビジネスをどう育てればいいと思いますか。

 小池百合子(こいけ・ゆりこ) 1952年兵庫県生まれ。カイロ大学文学部卒業後、ニュースキャスターなどを経て、92年7月に参議院議員に初当選。93年7月より衆議院議員。小泉内閣で環境大臣としてクールビズを推進し、第1次安倍内閣では女性初の防衛大臣に就任した。2016年、東京都知事に当選した。

 小池 ユヌスさんのいろいろな試みが、バングラデシュの人々の生活や一人一人の可能性を伸ばしていることに祝意を述べたいと思います。バングラデシュは規制が少ないというか、まだ厳しくないゆえに、とてものびのびと挑戦されています。日本ではいろいろな制度があって、既得権者がいて、何かを始めようとすると、特に霞が関(の役人)なんかは1分で10個くらいできない理由を探しますからね。やりたいことがなかなかできない。

 例えば地球温暖化問題で47億年の地球の歴史からひもといたりすると、「ああそうですか」で終わるのですね。理解はするけど行動には移らない。どうやって行動にうつすか。そのためには、まず共感にたどりつくことが必要です。クールビズは、夏の暑い日にビジネスマンが汗ふきふき活動しておられたところに、「環境大臣が言うのだから」というお墨付きが出たので、あっという間に広がったのだろうと思います。

 それは新しいビジネスも生み出しました。当時、経済効果は1300億円のような数字が出ていましたが、それがまた日本の繊維産業に新しいビジネスの分野をつくったのです。ヒヤッとする、クールな繊維という方向にまでのびていっている。クールビズのせいだとは言いませんが、それでも何らかの火付け役になれたのではないか。それで経済が変わって、テクノロジーが進化したということでは、地球全体のサスティナビリティーに少しはクールビズが貢献しているのかなと思います。

 私のやり方は大義を大きく掲げて、だけど、小さく小分けにして、みんなが「そうだね」とか、「楽しいね」とか、共感を呼ぶようにしています。 ・・・続きを読む
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筆者

石井徹

石井徹(いしい・とおる) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

朝日新聞編集委員。東京都出身。1985年朝日新聞入社、盛岡支局員、社会部員、千葉総局次長、青森総局長などを務めた。97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、国内外の環境問題やエネルギー問題を中心に取材・執筆活動を続けている。共著に「地球異変」「地球よ 環境元年宣言」「エコウオーズ」など。

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