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存続が危ぶまれる沖縄の歳時記

米軍基地にむしばまれる人々の暮らしのリズム

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 那覇泊港の夜空を飾る打ち上げ花火をフィナーレに那覇ハーリーが5月5日に終わった。ハーリー鉦の鳴るのを聞いて、沖縄の人々は本格的な夏が訪れたことを知る。

那覇ハーリー(那覇市提供)
 ハーリーは中国伝来の爬竜船(はりゅうせん)のことで、初夏の沖縄でもっとも活気ある行事といえば何といってもハーリーである。県内各地の漁港では、サバニと呼ばれる伝統漁船を使ったレースが繰り広げられる。もともと海人(うみんちゅ=漁師)による豊漁や航海無事を祈願するための祭りであるが、それが近年では大衆化し、女性や子供、さらには旅行者でも参加できるイベントになっている。本来は、旧暦の5月4日(今年は新暦の5月29日)に行われるのだが、那覇ハーリーはゴールデンウィークの5月3日〜5日に行われるのだ。

夏の到来を告げるハーリー鉦

 沖縄では、「ハーリー鉦が鳴ると梅雨が明ける」と言われているが、これは雲のすき間から爬竜船競渡を楽しみたいという人々の願望を表したものと思われる。実は沖縄の梅雨はこれから始まるのだ。過去30年の気象統計で見ると、梅雨入りは平均で新暦の5月9日であり、東京地方に比べほぼ1ヵ月早い。そして梅雨明けの平均は新暦の6月23日である。これは沖縄戦が実質的に終息したとされる「慰霊の日」だ。

 梅雨のことを沖縄では小満芒種(スーマンボースー)と呼ぶが、これは二十四節気のうちの小満(新暦の5月21日)から芒種(新暦の6月5日)の間が最も雨量が多いことによる。沖縄の人々の暮らしには、今も歳時記が大切な節目となっている。

 清明(せいめい、沖縄ではシーミーと発音する)は二十四節気の5番目で、春分と穀雨の間の時期であり、新暦の4月4日から19日までである。万物が清々しく美しくなるこの時期、中国の清明節では墓参りをし、草むしりなどをして墓を掃除する。

シーミーにはご先祖様の墓参り

 沖縄においてもお墓の掃除とともに墓参りをし、親族そろって墓前で食事をするのがならわしだ。清明祭は、沖縄では旧盆、十六日祭とともに先祖供養のための欠かせない行事である。なお十六日祭は、後生(グソウ)の正月とも呼ばれ、旧暦1月16日に盛大に行われる祖先供養である。本土ではあまり知られていないが、沖縄には新正月、旧正月、そして後生の正月と正月が3つあるのだ。

 シーミーは基本的には清明の入りから15日以内に行うのが基本であるが、現代ではナガリシーミー(流れ清明)といって休日に行うことが多いようである。我が家も、

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