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「身勝手な漁業」はもうやめませんか

自然保護団体と水産庁の研究所、早大が共催した国際シンポジウムの大きな意義

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 日本近海のマグロが激減し、国際社会から乱獲の責任が問われているなか、「水産物の透明性と持続可能性」と題する国際シンポジウムが5月16、17日に早稲田大学で開かれた。ワシントンに本部を置く世界的な自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)と国立研究開発法人水産研究・教育機構(水研機構)、早稲田大学地域・地域間研究機構の3者が共催したもので、とかく利害が対立しがちな世界と日本、自然保護団体と漁業者、水産庁傘下の研究所と大学といった多様な立場の関係者が一堂に会したユニークで意義深い催しとなった。議論を聞いて、日本の水産行政は根本的な変革を迫られていると改めて痛感した。

2日目の「水産物の透明性と持続可能性の実現に向けた政策・取組み」のセッション。ジャーナリストの井田徹治氏やTNCのマーク・ジムリング氏、米国の水産輸出会社のトーマス・クラフト氏らが登壇した。

 国際シンポのテーマは大きくわけて二つあった。一つは違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策、もう一つが日本として水産物の透明性と持続可能性の確保のためにこれからどんな取り組みをしていくか、だ。

 「水産物の透明性」と言われても、消費者はピンと来ないだろう。要は、いつ、どこで、どんな魚をどれだけ獲ったか、データをきちんと集めて公開していくということだ。そのデータをもとに、獲りすぎになっていないかチェックする科学者がいて、その報告を踏まえて漁獲規制が行われて、その規制が守られることでようやく持続可能な漁業が成立する。

 TNCの資料によると、国連食糧農業機関(FAO)は世界の水産資源の90%近くはすでに生物学的限度(獲っても大丈夫な限度)もしくはそれ以上まで獲られていると報告している。もはや「獲りたいだけ獲る漁業」は「地球の敵」であり「人類の敵」なのである。

 だから国際社会は漁業には管理が不可欠だと考え、自国の漁業管理制度を整える一方で、国際協力によって管理が遅れている途上国も巻き込んでIUU漁業対策を進めようとしている。最近よく聞くようになった世界共通の2030年目標「SDGs(持続可能な開発のための2030アジェンダ)」でも、169のターゲットのうちの一つとしてIUU漁業をなくして科学的情報に基づいた管理を進めることにより水産資源を回復させるという目標が入っている。

 国際シンポでは、1日目がIUU漁業問題に当てられ、水研機構の大関芳沖理事長、WWF(世界自然保護基金)とIUCN(国際自然保護連合)の共同プログラム「トラフィック」のプログラムオフィサーである白石広美氏、欧州委員会のステファン・デピュピュレ海事漁業局長、米国海洋大気庁(NOAA)国際・水産物検査室ディレクターのジョン・ヘンダーシェッド氏、水産庁の長谷成人次長らが、日本近海のIUU漁業の現状や人工衛星など最新テクノロジーを使った対策の最前線、ほかの海域の状況、国際協力の現状と課題などを報告した。

基調講演する石破茂氏

 日本としての取り組みを議論する2日目には、自民党水産基本政策委員長を務める石破茂衆議院議員が基調講演者として登壇し、

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