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「やる気や才能を死蔵させない」という世界潮流

第10回ジェンダーサミットの日本開催は何をもたらしたか

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 「ジェンダーサミット(GS)」は、科学技術の世界にもっと女性をという問題意識から2011年に始まった国際会議である。2015年に韓国ソウルで第6回が開かれ、そして2017年に日本で第10回(GS10)が開かれた。これまでの開催地はブリュッセル(事実上のEUの首都)が4回、ワシントンD.C.、南アフリカのケープタウン、ベルリン、メキシコシティーで、今年秋にカナダ・モントリオール、来年春にエチオピア・アジスアベバで開かれることが決まっている。東京・一橋講堂で5月25,26日に開かれた会議は何を日本にもたらしたのか。

第10回ジェンダーサミット=東京・一橋講堂

 GS10は科学技術振興機構(JST)と日本学術会議、欧州委員会の委託を受けたポルシャ社の3者が主催し、欧州委員会が後援した。国内の後援団体には文部科学省や内閣府、日本経済団体連合会、国立大学協会などが連なった。

 ここまでの情報からわかるように、これは欧州主導の運動である。欧州委員会は、欧州全体として科学研究とイノベーションを進めており、例えば2014年から2020年までの7年間のプログラム「ホライズン2020」には約800億ユーロの公的資金が提供されている。この資金をどのような研究に振り向けるべきかについてはスタート前からオープンな議論が繰り広げられ、どんな分野にも共通する課題として「ジェンダー」が注目されたのだった。当初のジェンダーサミットの提言は、ホライズン2020の予算配分方針に反映されている。

 今さら説明するまでもないと思うが、ジェンダーとは社会的、文化的に形成された性差のことである。日本よりずっと男女平等度が高い欧州各国でも、科学技術の世界では女性は少数派だ。それが科学技術の発展やイノベーション創出にマイナスの影響を及ぼしているというのがジェンダーサミットが打ち出したコンセプトだった。

 日本でも、文部科学省が2006年開始の女性研究者支援モデル育成事業、2009年開始の女性研究者養成システム改革加速事業などを実施してきたが、これらは女性研究者「を」支援するという発想に立つ。米国は

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