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島同士の協力でゴミ問題の解決を

先進国のメーカーの責任が問われている

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 以前筆者は、「リサイクル法が不法投棄を助長する 島ならではの難しさを抱える沖縄のゴミ問題」というタイトルで沖縄のゴミ問題の難しさを紹介した。その際に触れたのが、島でゴミ行政の困難さを生かして展開されている沖縄ならではの国際協力活動であった。国際協力機構(JICA)が大洋州の11の島嶼(とうしょ)国を対象に実施してきたゴミ行政改善プロジェクトJ-PRISMがそれである。

 2011年から2016年までの第1期が終了し、今年2017年、今度は九つの島国の共同プロジェクトとしてJ―PRISMの第2期(2017年から2022年)が始まった。第2期のキックオフ会合がソロモン諸島の首都ホニアラで7月10日・11日に開かれ、筆者はJ-PRISMの国内支援委員会の委員長として参加した。そこでこの会合を通じて見えてきたことを以下に報告しよう。

ガダルカナル島がある国

 ソロモン諸島は南太平洋のメラネシアにある島嶼群であり、オーストラリアの北東、パプアニューギニアの東に位置している。総面積は九州の8割ほど、人口は50万を少し超えるだけの小国である。

 1978年に英連邦王国として独立し、国家元首はエリザベス2世女王だ。この国は日本ではあまり知られていないが、先の大戦で日米の最激戦地となったガダルカナル島がある国である。首都ホニアラはガダルカナル島にあり、日本陸軍が建設し、米軍に奪取されたヘンダーソン空港が今も国際空港としてこの国の玄関口となっている。その趣は、まさに田舎の駅のたたずまいだ。

 筆者は、独立前の1977年、そして1996年にホニアラを訪れており、今回が3回目の訪問だ。建物は3階以上のものは見当たらず、首都といっても田舎の町の雰囲気は前回訪れた時とさほど変わっていない。どの途上国にも共通するが、職のない若者が首都に集中し、社会問題になっている。そして町の至る所にゴミが捨てられ、野焼きされている。

島のゴミ問題の困難性

 大洋州の島嶼国は、いずれも先進国からの輸入物資であふれているが、リサイクルを回そうとしても量がまとまらず、かつ先進国のリサイクル市場が遠く、輸送費を考えるとコスト的に引き合わない場合が多い。

デング熱への注意を呼びかけるポスター。散乱ごみが小さな水溜りをつくり、そこから蚊が発生することが原因だと警告しているデング熱への注意を呼びかけるポスター。散乱ごみが小さな水溜りをつくり、そこから蚊が発生することが原因だと警告している
 また島が狭小で埋め立て地の確保が難しく、ゴミの行き場に乏しい。不法投棄が増え、ヤシガラや空き缶などの水たまりが増えると、蚊が媒介するデング熱の流行など住民の健康を大きく損なうこととなる。また経済が観光に依拠している国の場合には、美観という重要な資源が損なわれることにもなる。

 こうしたことから、JICA(国際協力機構)とSPREP(大洋州地域環境プログラム事務局:在サモアの国際機関)の支援により、大洋州の島嶼国が、相互協力でゴミ問題の解決を図ろうとしているのがJ―PRISMである。

 会合では、第1期の成果の確認がまずなされ、島嶼国向きのゴミ行政の様々な模範事例(グッド・プラクティス)が生み出されたことが確認された。

 トンガではゴミ公社が電気料金に上乗せしてゴミ料金を徴収する仕組みを立ち上げており、ゴミ財政の健全化のモデルとなるのではと期待されている。前回も紹介したが、パラオから他の大洋州島嶼諸国に広がりつつあるCDL(Container Deposit Legislation)という仕組みも優れものである。

 これは、島嶼国に大量に流入してくるビン・缶などの容器に入国の際にデポジットを課し、市民が使用済みの容器を回収センターに搬入した際に払い戻す制度である。デポジットの一部は回収センターの運営費用に充てられ、残余が市民に払い戻される。この仕組みによって容器ゴミのリサイクルが進み、ゴミ量が減るだけでなく、散乱ゴミの問題が解消し、島の美化が観光産業にとっても大きなプラスとなっている。

 小さな島嶼国だからこそ実施が容易なリサイクル促進策である。

 第2期J―PRISMの基本方針は、こうしたグッド・プラクティスの開発を継続し、それを島嶼国ネットワークを通じて共有していこうというものである。島国の人材の層は薄く、人事の異動があると直ちに人材が払底する。それを島嶼国ネットワークで補完していこうと考えている。

 沖縄からは、

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