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「プラ『レア』リウム33箇所巡り」の大冒険

明石市立天文科学館の55周年事業は主催者の想像を超えた

井上毅 明石市立天文科学館館長

拡大東経135度日本標準子午線の真上に立つ明石市立天文科学館
  丸いドーム天井に星が映し出され、星座の話や宇宙の不思議について解説を聞き、思いをはせるプラネタリウム。これが全国に約300施設ある日本は、プラネタリウム大国だ。設置されているのは科学館ばかりではない。図書館、児童センター、公民館、ホテル、飲食店など、公的施設から民間施設までプラネタリウムのある施設は意外に多い。そんな中でとくに珍しいレアなところを33箇所選定し、3年3カ月かけて巡ろうという企画を明石市立天文科学館が2015年に開館55周年事業として始めた。名付けて「全国プラ『レア』リウム33箇所巡り」。これが、私たちの想像をはるかに超える盛り上がりを見せている。

プラネタリウムはオーダーメイド

 明石市立天文科学館は東経135度日本標準時子午線の真上に建つ時と宇宙をテーマとした博物館だ。館内には直径20メートルのプラネタリウム・ドームがあり、カールツァイス・イエナ社のプラネタリウムが設置してある。

拡大明石市立天文科学館のプラネタリウム。右に写っているのは筆者。

 私は1997年より当館で学芸員として勤務しており、プラネタリウムの投影をおこなっている。たくさんあるスイッチを操作しながら、星空の解説をする。解説者は一人何役もこなす職人芸である。私は、天文の魅力を多くの人に伝えたいとの思いから学芸員の道を選んだのだが、プラネタリウムは最高の装置だと日々実感している。今年から館長職に就いたが、投影は変わらず行っている。

 また、仕事柄、全国の施設を見学する機会も多い。そのたびに実感するのだが、プラネタリウムの投影機は施設に合わせたオーダーメイドである。ドームの大きさ、座席配列、映像装置、設置目的など、設置者とメーカーは知恵を絞って一つ一つの施設を良いものにしようと努力している。結果、全てのプラネタリウムがオンリーワンの存在といえるのだ。

 私の先輩にあたる長尾高明前館長は、技術職員として長くプラネタリウムの整備にあたってきた。そして、長年、プラネタリウムのハード面の面白さを楽しむ企画を温めていた。それを実現させたのが、55周年記念事業だった。全国の施設に呼びかけ、自薦他薦を取りまとめ、33箇所を選んだ。

拡大全国プラ「レア」リウム33箇所巡りガイドブック(330円)

 当館のプラネタリウムは日本で唯一のカールツァイス・イエナ社の大型プラネタリウムで、設置は1960年。国内現役の最古にして、最も長く稼働しているプラネタリウムだ。というわけで、堂々「プラ『レア』リウム」の一つとなった。このほか、国内最北端、最南端、国産メーカー現役最古、地上高が最も高い、証券会社に設置してある、神社の敷地内にある、消防署の上にある、など、さまざまな切り口でレアなプラネタリウムが選ばれた。

 当館製作の「全国プラ『レア』リウム33箇所巡り」ガイドブック(330円)は、当館ミュージアムショップで販売されている。ここには33箇所の投影機メーカーと機種名、「レア」な情報等を写真とともにわかりやすく掲載している。珍しいプラネタリウムのリストになっているということで、よく売れていて、2000部印刷していたが、完売してしまった。この手の商品としては異例の売れ行きである。現在、増刷を準備している。

想定外のコンプリート続出

 しかし、この全てを3年3か月以内で巡るのは並大抵のことではない。何しろ最北端から最南端まで、つまり北海道から沖縄まである。北海道だけで稚内、釧路、旭川とそれぞれに離れた3箇所を回らなければならない。中には相当辺鄙なところに立つ施設もあり、主催者である私たちも、期間中に達成する人はいないかもしれないと話していた。ところが、 ・・・続きを読む
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筆者

井上毅

井上毅(いのうえ・たけし) 明石市立天文科学館館長

兵庫県姫路市出身、名古屋大学大学院理学研究科修了。旭高原自然活用村協会 旭高原元気村きらめき館天文台を経て1997年から明石市立天文科学館学芸員、2017年から現職。プラネタリウムの投影、展示やイベントの企画制作、時や宇宙に関する調査研究など。日本公開天文台協会 事務局長、世界天文年2009日本委員会企画委員、金環日食限界線研究会代表。ブラック星博士のマネージャー。天文雑誌星ナビ連載中。天文普及の貢献により、小惑星10616はInouetakeshiと命名されている。