明石市立天文科学館の55周年事業は主催者の想像を超えた
2017年07月28日
明石市立天文科学館は東経135度日本標準時子午線の真上に建つ時と宇宙をテーマとした博物館だ。館内には直径20メートルのプラネタリウム・ドームがあり、カールツァイス・イエナ社のプラネタリウムが設置してある。
私は1997年より当館で学芸員として勤務しており、プラネタリウムの投影をおこなっている。たくさんあるスイッチを操作しながら、星空の解説をする。解説者は一人何役もこなす職人芸である。私は、天文の魅力を多くの人に伝えたいとの思いから学芸員の道を選んだのだが、プラネタリウムは最高の装置だと日々実感している。今年から館長職に就いたが、投影は変わらず行っている。
また、仕事柄、全国の施設を見学する機会も多い。そのたびに実感するのだが、プラネタリウムの投影機は施設に合わせたオーダーメイドである。ドームの大きさ、座席配列、映像装置、設置目的など、設置者とメーカーは知恵を絞って一つ一つの施設を良いものにしようと努力している。結果、全てのプラネタリウムがオンリーワンの存在といえるのだ。
私の先輩にあたる長尾高明前館長は、技術職員として長くプラネタリウムの整備にあたってきた。そして、長年、プラネタリウムのハード面の面白さを楽しむ企画を温めていた。それを実現させたのが、55周年記念事業だった。全国の施設に呼びかけ、自薦他薦を取りまとめ、33箇所を選んだ。
当館のプラネタリウムは日本で唯一のカールツァイス・イエナ社の大型プラネタリウムで、設置は1960年。国内現役の最古にして、最も長く稼働しているプラネタリウムだ。というわけで、堂々「プラ『レア』リウム」の一つとなった。このほか、国内最北端、最南端、国産メーカー現役最古、地上高が最も高い、証券会社に設置してある、神社の敷地内にある、消防署の上にある、など、さまざまな切り口でレアなプラネタリウムが選ばれた。
当館製作の「全国プラ『レア』リウム33箇所巡り」ガイドブック(330円)は、当館ミュージアムショップで販売されている。ここには33箇所の投影機メーカーと機種名、「レア」な情報等を写真とともにわかりやすく掲載している。珍しいプラネタリウムのリストになっているということで、よく売れていて、2000部印刷していたが、完売してしまった。この手の商品としては異例の売れ行きである。現在、増刷を準備している。
しかし、この全てを3年3か月以内で巡るのは並大抵のことではない。何しろ最北端から最南端まで、つまり北海道から沖縄まである。北海道だけで稚内、釧路、旭川とそれぞれに離れた3箇所を回らなければならない。中には相当辺鄙なところに立つ施設もあり、主催者である私たちも、期間中に達成する人はいないかもしれないと話していた。ところが、
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