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ゲノム解読で新時代を迎える伝統のアサガオ研究

江戸時代の文化・文政期に出現した第1次アサガオブーム、いまは第4次ブーム?

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

国立歴史民俗博物館くらしの植物苑の特別企画「伝統の朝顔」では、タネのできない「出物」も多数展示されている。
 千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館くらしの植物苑で、7月25日から今年で19回目を迎える特別企画「伝統の朝顔」が始まった。9月10日までという長期にわたり、1日でしぼんでしまう多様なアサガオを展示し続ける催しはほかに類例がない。2002年から日本固有の生物遺伝資源をまとめて管理するナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)が始まり、アサガオの系統保存も国家事業として行われるようになった。昨年秋には、日本の研究グループがアサガオの全ゲノム解読を発表した。今や研究者からも愛好家からもアサガオに注目が集まり、「第4次ブーム到来か」の声も上がっている。

江戸時代から昭和初期まで3回のブーム

 日本のアサガオブームは、これまで3回あった。第1次は、江戸時代の文化・文政期(1804-1831)で、突然変異による変わったアサガオ=「変化朝顔」が珍重されるようになった。このときは突然変異が起きていてもタネはできる系統(「正木」と呼ばれる)が大半を占めていた。タネができないアサガオは「出物」と呼ばれる。これが盛んに作られるようになったのが江戸末期の嘉永・安政期(1847-1860)で、このときが第2次ブームだ。明治維新の混乱でアサガオづくりも下火になったが、明治後期から昭和の初期にかけて再び活発になり、第3次ブームを迎えた。

観察会で解説する九州大学の仁田坂英二さん

 平成の時代に第4次ブームを起こそうと仕掛けているのが九州大学理学部生物学科講師の仁田坂英二さんだ。国家事業NBRPのアサガオの責任者であり、1999年に歴博が「伝統の朝顔」展を始めるときに65系統のアサガオを提供した。毎年の観察会の講師も務めている。

 子どものころから変わったアサガオに惹(ひ)かれ、「変化朝顔研究会」ができると中学生だったのにすぐに入会したという筋金入りのアサガオ好きだ。九大では当初はショウジョウバエの研究をしていたが、

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