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水産庁マグロ規制の漁獲枠配分に問題あり

「主犯」の沖合漁業が批判されず、沿岸漁業が悪者にされる理不尽

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

 太平洋クロマグロを始めとする水産資源管理について、水産庁への風当たりが強い。朝日社説(2/23 、8/16)に加え、読売の社説(8/20 )や産経の主張(8/22 )でも取り上げられた。

拡大まき網船から水揚げされる40キロ級のクロマグロ=2014年6月、鳥取県境港、依光隆明撮影

 国際的な漁業管理機関である中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で合意した暫定回復目標を達成するために水産庁が実施するマグロ漁獲規制は、沖合漁業(船団を組んで沖合に出て行く「まき網」が中心)と沿岸漁業(定置網やはえ縄が中心)で分けている。昨年度の漁獲枠を超えたのは沖合漁業でなく、沿岸漁業だった 。今後の漁獲枠が減らされて操業できなくなった国内の定置網漁業者から強い不満の声が聞かれる(日経4/25 )。反対に環境団体や諸外国からは、この暫定目標が甘すぎるという批判、規制がゆるすぎるという批判がある。環境団体の矛先は、マグロを減らした「主犯」のまき網に向いているはずだが、結果として、沿岸漁業が悪者にされる理不尽な事態はなぜ生じたのか。

 日中韓米豪など26か国が加盟するWCPFCの資源評価によると、クロマグロの親魚量資源は近年極めて低い水準となり、1952年以後の「歴史的中間値」4.1万トンに比べ、2010年には約3割の1.2万トンになった(図1)。そのため、「2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値まで回復させることを暫定回復目標とする」といった合意が成立した 。

拡大図1 1952年以後の太平洋クロマグロ親魚資源量推定値の推移(図はいずれもWCPFC資料 より作図)
WCPFC資料

 持続可能な漁業のために小型魚漁獲を減らすべきことは、WCPFC関係者の間でほぼ一致している。小型魚を獲れば、このマグロが成長して産むだろう未来の繁殖の機会も奪うことになる。これは、「繁殖価」という指標で計ることができる。大型魚1kg獲るより小型魚1kg獲るほうが将来資源への打撃は大きい。

 まき網漁業は、2002-04年(期間1)に小型魚を年間4545トン獲った(図2)。いったん持ち直した資源がまた減り始めた頃である。2014-16年(期間2)は2136トンに減っている。定置網では小型魚を期間1に772トン、期間2に957トン獲り、減っていないが、そもそも漁獲量はまき網に遠く及ばない。期間1で6分の1強、期間2で2分の1弱である。

拡大図2 漁法別漁獲量の推移
WCPFC資料

 昨年度、小型魚漁獲を減らすために、まき網については2002-04年の実績の約半分である2000トン、定置網については2014-16年の実績の約半分の482トンを漁獲枠とすることになった。そして、まき網は漁獲枠を守り、定置網は760トンを獲り、枠を大幅に超過した。WCPFCの取り決めに従い、超過分は今年度の枠から差し引かれることになり、多くの定置網は操業期間を縮めざるを得なくなっている。また、大型魚の漁獲枠は現状維持だが、小型魚の代わりに大型魚をとることが奨励されている。

 定置網は受け身の漁具であり、 ・・・続きを読む
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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

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