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化学賞は膜たんぱく質かバイオインフォマティクス

秘密のルールをもとに記者が全力で予想

小宮山亮磨 朝日新聞記者(科学医療部)

 ノーベル自然科学3賞のなかで、もっとも難しいと言われている化学賞の予想をするよう、現役の担当記者である私が指名を受けた。医学生理学賞の予想記事にもあったように、発表後すみやかに原稿を出す上で予想はきわめて大切だ。本気で的中させるべく、各方面に取材して得た(けれど新聞紙面には書ききれない)情報の一部を、ここで披露します。

 選考委員会の授賞履歴を見ていくと、決め方には「ルール」があるらしい。そのことを、独自の予想を例年発表しているウェブサイト「Chem-Station」代表の山口潤一郎・早稲田大准教授に教えてもらった。

 そのルールがうまくはまれば、ずばり、今年のノーベル化学賞は「膜たんぱく質」あるいは「バイオインフォマティクス」の研究者に与えられる!

 膜たんぱく質とは、その名の通り、細胞の表面や中にある膜にくっついているたんぱく質のことだ。この分野では、「オプトジェネティクス(光遺伝学)」という技術を開発した米スタンフォード大のカール・ダイセロス氏や米マサチューセッツ工科大のエドワード・ボイデン氏が注目株だろう。ダイセロス氏は45歳、ボイデン氏は38歳と、いずれも若い。光を当てると活性化するたんぱく質を利用して特定の細胞の働きを人為的に操る技術で、脳科学に革命を起こしたと評価されている。

沈さん(左)と神谷さん=2012年12月、金川雄策撮影

 日本でも膜たんぱく質の分野には、大阪市立大の神谷信夫教授と、岡山大の沈建仁教授(中国籍)という有力な候補者がいる。植物が光合成をするとき中心的な役割を果たす「PSⅡ」の構造を、原子ひとつひとつの並び方まで詳細に解き明かした2人だ。

 膜に埋め込まれているこのたんぱく質は、光を受けると水を酸素と水素イオンに分解する。20年の地道な研究で質の高い結晶をつくるのに沈さんが成功し、神谷さんが理化学研究所の大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)を使って構造を分析した。2011年に英科学誌ネイチャーで論文を発表すると、米科学誌サイエンスからはその年の「10大ブレークスルー」に選ばれた。クリーンエネルギーを生み出す「人工光合成」の研究にも、大いに役立つと期待されている。

水を酸素などに分解するたんぱく質「PSⅡ」の分子構造=岡山大提供

 もうひとつの有力候補「バイオインフォマティクス」は、

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