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やんばる世界遺産登録が問う「日米政府の矛盾」

環境管理基準で定めた「絶滅危惧種の生息地保護」を自ら裏切るオスプレイ配備

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 奄美・琉球はその豊かな生態系と生物多様性とにより世界自然遺産登録に値する。このため環境NGO諸団体は、IUCN(国際自然保護連合)総会などの場を通じて奄美・琉球の世界自然遺産登録を働きかけて来た。そうした取り組みの上に日本政府は奄美・琉球の世界自然遺産登録を目指し、本年2月1日にユネスコ世界遺産委員会に推薦書を提出し、これを受けユネスコの諮問機関のIUCNによる現地調査が、本年10月11〜20日に行われることとなった。

 登録対象の奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島の4島のうち、沖縄島北部(やんばる)は登録に際して米軍北部訓練場の存在が大きな障害となるであろうことは既に過去2回のWEBRONZAで報じてきた。やんばるの森は、昨年9月15日に環境省がやんばる国立公園として指定した地域であるが、高江集落を取り囲む形で6ヶ所のヘリパッドが建設された米軍北部訓練場に隣接しており、オスプレイが飛び交う環境が果たして世界自然遺産にふさわしいのかという根本的な問題を抱えているからである。この問題について改めて報告しておきたい。

緩衝地帯のアンバランス

拡大世界自然遺産候補地の区域案
 図に示されるように、日本政府が提出した推薦書では世界自然遺産推薦地域の西側には緩衝地帯が設定されているが、東側に接する米軍北部訓練場は日米地位協定により日本政府の管理の下にないとして、緩衝地帯は全く設定されていない。やんばるの森に棲む絶滅危惧種で国指定特別天然記念物のノグチゲラは、米軍北部訓練場にも生息し、営巣するイタジイの森もその分布域は北部訓練場にまで広がっている。従って、世界自然遺産登録に必要な「完全性」の観点からは、北部訓練場が推薦地域や緩衝地帯に指定されていないことは極めて不都合である。

 この推薦書では、東側に緩衝地帯が設定されていないだけでなく、北部訓練場の存在そのものも記されていない。10月に来沖するIUCN現地調査団は、主として推薦地域の境界の確認を行うとされているが、推薦地域の東側に何があるのか全く示さない推薦書は審査に当たるIUCNの視点に立てば異様としか言いようがない。

無視される世界遺産条約の理念

 1972年にUNESCO総会で制定され、日本が1992年に批准した世界遺産条約の第11条第3項は、「世界遺産リストへの登録は関係国の了解を必要とする。一つ以上の国家が関わる遺産の登録は、関係国が異論を唱える権利を妨げてはならない」としている。

拡大ヤンバルクイナ=浜田哲二撮影
 北部訓練場は、日米地位協定第3条により米軍に排他的管理権があり、やんばるはまさに世界遺産条約のこの条項に該当する。そして世界遺産条約管理ガイドライン・セクション135は、「条約第11条第3項に基づき、関係国は可能な限り共同して境界をまたぐ形で地域指定を準備し提出すべきである。境界をまたぐ遺産全体を管理する共同管理委員会などの組織を関係国が設置することが強く薦められる」としている。

 世界遺産条約の締約国である日米両国は、やんばるを真に世界自然遺産の名に値する形で共同管理することが求められているのである。本年2月1日に日本政府が提出した推薦書は世界遺産条約のこの理念を完全に無視している。 ・・・続きを読む
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筆者

桜井国俊

桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。

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