環境管理基準で定めた「絶滅危惧種の生息地保護」を自ら裏切るオスプレイ配備
2017年10月05日
奄美・琉球はその豊かな生態系と生物多様性とにより世界自然遺産登録に値する。このため環境NGO諸団体は、IUCN(国際自然保護連合)総会などの場を通じて奄美・琉球の世界自然遺産登録を働きかけて来た。そうした取り組みの上に日本政府は奄美・琉球の世界自然遺産登録を目指し、本年2月1日にユネスコ世界遺産委員会に推薦書を提出し、これを受けユネスコの諮問機関のIUCNによる現地調査が、本年10月11〜20日に行われることとなった。
登録対象の奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島の4島のうち、沖縄島北部(やんばる)は登録に際して米軍北部訓練場の存在が大きな障害となるであろうことは既に過去2回のWEBRONZAで報じてきた。やんばるの森は、昨年9月15日に環境省がやんばる国立公園として指定した地域であるが、高江集落を取り囲む形で6ヶ所のヘリパッドが建設された米軍北部訓練場に隣接しており、オスプレイが飛び交う環境が果たして世界自然遺産にふさわしいのかという根本的な問題を抱えているからである。この問題について改めて報告しておきたい。
この推薦書では、東側に緩衝地帯が設定されていないだけでなく、北部訓練場の存在そのものも記されていない。10月に来沖するIUCN現地調査団は、主として推薦地域の境界の確認を行うとされているが、推薦地域の東側に何があるのか全く示さない推薦書は審査に当たるIUCNの視点に立てば異様としか言いようがない。
1972年にUNESCO総会で制定され、日本が1992年に批准した世界遺産条約の第11条第3項は、「世界遺産リストへの登録は関係国の了解を必要とする。一つ以上の国家が関わる遺産の登録は、関係国が異論を唱える権利を妨げてはならない」としている。
世界遺産条約の締約国である日米両国は、やんばるを真に世界自然遺産の名に値する形で共同管理することが求められているのである。本年2月1日に日本政府が提出した推薦書は世界遺産条約のこの理念を完全に無視している。
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