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ジュゴン日本個体群の絶滅を座視してはならない

他国のジュゴンの人為導入など思い切った対策を一刻も早く打つべし

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

 台湾では絶滅し、フィリピンでも絶滅の危機にあるジュゴン(Dugong dugon)は、西太平洋、インド洋、紅海に分布するカイギュウ目に属する海草食の哺乳類である。大西洋とアフリカ、南米大陸内水面に生息するマナティーとは科が異なり、1科1属1種である。種全体で10万頭いるとされるが、国際自然保護連合のレッドリストではVU(絶滅危惧II類)と判定されている。西太平洋のジュゴンは遺伝系統も日本の個体群に近い(環境省2006の36頁)。その日本の個体群も激減しており、沖縄本島周辺の調査では2015年9月以降2頭しか確認されていない。絶滅を回避するために一刻も早く対策を打つべきである。

拡大沖縄県名護市沖で撮影されたジュゴン=2014年5月19日、沖縄防衛局撮影

 1893年から1916年の捕獲統計によると、この期間の24年間に沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島でそれぞれ60頭、25頭、247頭の捕獲が記録されている。特に、1900年以後はダイナマイト漁でも捕獲されていたという。その後は記録がないが、第二次大戦直後にはかなりの密漁があったとみられている。1972年に国の天然記念物に指定された(当山2015)。年あたり1~5%程度の自然増加率を仮定した場合、1865年には沖縄県全体で300頭以上、沖縄諸島だけでも60頭以上の個体がいたと推定される。そうでなければ、1916年までにジュゴンは乱獲によって絶滅していただろう。

拡大図1 沖縄本島周辺海域におけるジュゴンの目視地点と食跡の分布状況(1965~2006)=環境省2006のP14
環境省2006

 1965年からはジュゴンの混獲と座礁による計21頭の死亡記録がある。死亡個体の報告は2004年の1頭を最後にない。1965年池間島、67年伊良部島(いずれも宮古諸島)、2002年熊本県の各1頭以外はすべて沖縄諸島での死亡でありa、宮古・八重山諸島では既に絶滅した可能性がある。沖縄本島周辺の調査では1999年4月のジュゴンネットワーク沖縄による最小確認個体数6頭と報告され、2000年11月の防衛施設庁と2003年7月の環境省による調査で同5頭、環境省による調査で2005年7月と2006年3月、沖縄防衛局による調査で2007年から2015年6月まで同3頭が確認されていたが、2015年9月以降はうち1頭が確認されていない

 1960年代までの減少の主要な要因は ・・・続きを読む
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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

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