汚染者負担原則の適用が不可欠
2018年02月14日
昨年10月26日の「脅かされる沖縄県民の命の水」で報じた通り、沖縄県民の飲み水の安全は米軍の活動によって大きく脅かされている。そこで報じたのは、10月11日に高江に緊急着陸・大破炎上した大型ヘリCH53の件であった。
同機はストロンチウム90や発がん性物質のベンゼンなどで周囲の土壌を汚染したが、大型ダンプ5台分もの土壌を米軍が持ち去ったため、汚染の実態は不明のままである。事故現場は福地ダムの流域界からわずか400メートルの地点であり、一歩間違えば県民の〝水がめ〟の水質汚染のリスクが発生して取水制限される可能性があった。
CH53の事故の記憶がまだ鮮明な本年1月、今度は米軍北部訓練場の返還地で米軍のものとみられる未使用の訓練弾やタイヤ、プロペラなど多数の廃棄物が見つかった。
チョウ類研究者の宮城秋乃さんが、国頭村安田(あだ)の山中を散策している際に発見したものである。現場は普久川ダム流域内で、廃棄物から出た汚染物質が、ダムに流れ出ている可能性もある。沖縄島北部にある5ダム(北から辺野喜ダム、普久川ダム、安波ダム、新川ダム、福地ダム)はトンネルで繫がっており、一体となって沖縄本島の6割の生活用水を賄っている。
米軍北部訓練場の過半の返還は、2016年12月になされた。約7800ヘクタールあった訓練場のうちおよそ4000ヘクタールが返還され、日本政府は沖縄の負担の大きな軽減であると大々的にPRした。
しかしこれは、北部訓練場に隣接する高江集落などにとってはむしろ負担の増加であった。返還地にあった7カ所のヘリパッドを閉鎖する代わりに、高江集落周辺に新たに6カ所のオスプレイ専用のヘリパッドを建設することが返還の条件となっており、返還されなかった地域にとってむしろ負担増になることは米軍自身も認めていたことであった。
返還から1年たった昨年12月、沖縄防衛局は、1年かけて米軍の軍事訓練に起因する環境汚染を取り除く支障除去や、不発弾を含む廃棄物の撤去作業を終えたと宣言し、地権者に土地を引き渡した。今回の廃棄物発見はその後のことであり、撤去作業が不十分であったことを物語っている。防衛局が支障除去を行った範囲は「土壌汚染の蓋然(がいぜん)性が高い」場所に限定されており、広大な返還地をわずか1年で支障除去することは、そもそも不可能だったのである。
ここで想起されるのは2007年1月に発覚した米兵によるダムへの弾薬類投棄事件である(この件については2016年10月5日付の「飲料水の安全をめぐる沖縄の苦闘」で報じた)。米軍北部訓練場に隣接する福地ダム、新川ダムに、訓練で余ったペイント弾、照明弾、手投げ弾など12000発以上もの弾薬類が投棄され、当時の翁長雄志那覇市長は、ブッシュ米大統領あてに「飲料水が汚染される可能性が常態的に存在することは、私たちの身体、生命の安全が常に脅かされているということであり、到底受け入れられない」という内容の要望書を送った。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください