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公的ビッグデータ活用の道を開くべし

死亡情報と照合・連結することで、さまざまな情報を取り出せる

大島明 大阪国際がんセンターがん対策センター特別研究員

高まる医療ビッグデータへの関心

 医療ビッグデータへの関心が高まっている。医療情報は、「厳重管理」と「有効活用」の両方が求められるものだが、その両立を目指す法的枠組みが昨年できた。

 改正個人情報保護法(2017年5月30日に全面施行)で、医療データ(「病歴」のほか、「医師等により行われた健康診断等の結果」及び「健康診断等の結果に基づき医師等により行われた指導・診療・調剤」に関する記述)は「要配慮個人情報」に該当するとされ、取得や第3者提供には本人の同意(オプトイン=本人が同意したときのみ提供可能)が必要という原則が示された。

拡大次世代医療基盤法で可能となった情報の流れ

 その直前の5月12日に公布された「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(「次世代医療基盤法」)は、高いセキュリティの認定等で担保された「認定匿名加工医療情報作成事業者」に医療機関が情報を提供する場合に限り、オプトアウト(=あらかじめ本人が拒否していなければ提供可能)を認めた。規定にのっとって匿名化がなされていれば、医療情報を製薬会社や大学などが使えるようになっている。

 これまでは、診療報酬明細書(レセプト)情報などの医療データが、行政、医療機関、保険者、研究機関等で独自に管理され、連結されないまま放置されてきた。「次世代医療基盤法」はこの現状を変えようとするものだ。効率的な連結のために、将来的には個人識別番号の医療の場への導入が想定されている。

 しかし、これには国民や医療者の十分な理解が必要だ。その前にやるべきことがあると筆者はかねて考えてきた。それは死亡情報(死亡年月日、死因)と、国が作成する各種の調査データとの連結である。それによって、健康にかかわる有用な情報が取り出せるようになる。国の統計調査というビッグデータが「宝の持ち腐れ」とならないように、検討を急ぐべきである。

職業・産業別死亡統計の現状と課題

 具体的な例を挙げて説明しよう。2018年3月2日に公表された平成27年度人口動態職業・産業別統計は、2015年4月1日から2016年3月31日までの期間に死亡したもの(死亡したときの年齢が15歳未満を除く)について、職業と死亡率の関連を明らかにしようとする統計だ。

 これは明治32年以降昭和42年までは毎年実施されていたが、1970年以降は5年毎に実施されるようになった。死亡率を計算する際の分母としては、国勢調査で把握した職業別及び産業別人口(15歳以上の日本人)が用いられる。分子となる死亡者の情報は、遺族が記入する死亡届から得られるものである。

拡大30-59歳男性の死亡率の推移、日本、1980年-2005年=出典:Wada K et al, BMJ 2012 Mar6

 この長期にわたる統計資料は、研究者が必要な手続きを踏んで匿名化個票データを入手できる。それを使って、長期にわたる死亡率の変化や、バブル経済の崩壊で管理職の自殺が顕著に増えたことなどを明らかにした研究が行われている(左のグラフ)。

 しかし、ここで注意するべきは、 ・・・続きを読む
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筆者

大島明

大島明(おおしま・あきら) 大阪国際がんセンターがん対策センター特別研究員

1966年大阪大学医学部卒業、1967年大阪府立成人病センター調査部就職、1996年同調査部長、2007年3月定年退職。専門は、がんの予防、がんの疫学。地域がん登録全国協議会理事長(1998-2006年)、日本禁煙推進医師歯科医師連盟会長(2003-2015年)を務めた。

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