自校出身者の教授がこれほど多い大学は、世界でもまれだ
2018年04月30日
竹は地下茎でつながり、一つの竹やぶは遺伝的に均一なクローンから成り立っている。同じ環境の下ではよく育ち繁栄する。しかし、同じ害虫や病気、環境の変化には弱い。しかも、竹やぶには寿命があり、真竹で120年といわれている。
私は今年、東京大学を定年退職した。私と同様、この3月に定年退職した東大教授の出身大学を見て驚いた。その7割以上が東大出身者なのだ。残り約2割も他の国立大学出身者だ。
かくも自校出身者率が高い大学は世界でもまれだ。私が留学していたカリフォルニア大学バークレイ校では同じキャンパスを卒業した教授は3年間で一人も出会わなかった。最近、同大学に自校出身者率を問い合わせてみても、そんな統計は取っていないという返事が来た。
東大では、教員の退職パーティーで後輩教員が「私は学生の時、先生にお世話になりました」と言ってお礼を述べるのが普通だ。師を敬うのは美しいが、それが常套句になるのはやはりおかしい。人事選考においても東大出身と聞くと、ある種の品質保証がなされたようで、皆、安心する。バークレイの教授から自校出身者は人事選考では後回しになるのが通例と聞いていたので、対照的だ。
東大のブランドと品質を維持すべく、教員たちは入学試験を極めて真剣に取り組む。昨今問題になっている試験問題のミスが東大では極めて少ないのはそのせいかもしれない。東大入試は、その成功体験者が作るシステムなので、教員は現状に疑問を抱かない。従来から問題が指摘されている一発入試や文科理科の区分けが続くのは、東大がその仕組みの勝者で構成されているので当然ともいえる。その影響は長きにわたり全国に及んでいる。
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