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太陽系外惑星から宇宙生物学へ

専用探査機TESSの打ち上げで迎える「観測の新時代」

須藤靖  東京大学教授(宇宙物理学)

 米国のマサチューセッツ工科大学が主導するNASA太陽系外惑星専用探査機TESS(テス)が、日本時間の2018年4月19日午前7時51分に打ち上げられた。すべて順調に進めば6月中には観測が始まる予定である。約2年間の観測期間中に、地球から300光年以内にある比較的近傍の恒星20万個をモニター、1600個の惑星(そのうち、地球半径の2倍以下の岩石惑星が500個)の発見が期待されている。いよいよ系外惑星研究の新時代の幕開けである。

系外惑星の発見数が急増

拡大TESSを搭載したロケット「ファルコン9」の打ち上げ(NASA提供)
 太陽のような恒星の回りを公転する系外惑星が初めて発見されたのは1995年。この時点をもって、事実上、系外惑星研究という新分野が誕生した。その直後から急速に進展しつつあったこの分野にさらなる革命をもたらしたのが、2009年3月に打ち上げられた米国のトランジット系外惑星専用探査機ケプラーである。2013年8月に姿勢制御系のトラブルのため本来の観測が継続できなくなるまでの約3年半の間、約10万個の恒星をモニターし続け、約4500の惑星候補を発見した。

 トランジット法とは、中心星の前面を惑星が通過(トランジット)して一部を隠す際に、その星が少しだけ暗く見えることを利用する惑星検出法である。原理としては日食と同じなのだが、系外惑星系の場合は遠いため惑星の影の形は検出できないし、そもそも中心星がわずか(0.01〜1パーセント程度)暗くなるだけである。そのために、精密な観測には大気の影響がない宇宙望遠鏡が必要となる。地球から見て惑星がトランジットを起こす公転軌道面にある幾何学的確率は高くないため、発見数を稼ぐには多数の恒星を同時にモニターする必要がある。そのための専用宇宙望遠鏡がケプラーであり、その後継機たるTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite:トランジット系外惑星探査衛星)なのである。

拡大【図1】惑星発見総数の年次変化
 ケプラーがもたらしたインパクトの凄さは、惑星発見総数の年次変化のグラフからも一目瞭然である(図1)。ケプラー以前には、主星の運動を観測する視線速度法が主流であったが、ケプラー打ち上げ以降は、トランジット法に取って代わられる。2014年と2016年に発見数が突然増加しているのは、ケプラーのチームがそれまでに発見した惑星をまとめて発表したためである。

星のほとんどに、大きな惑星がたくさん

 さて、ケプラー打ち上げ当時には、恒星が惑星をもつ割合などの基本的な統計データが不足していた。そのために、ケプラーチームは、はくちょう座の方向のごく限られた領域にある星だけに絞り3.5年間もの長期間継続モニターする方法を選んだ。これは全天のわずか0.25パーセントの面積に過ぎない。しかし、比較的大きな口径1.4メートルの望遠鏡を搭載したおかげで、3000光年以内にある星を観測することが可能となった。つまり、「狭く遠くを長時間モニターする」戦略が採用されたのだ。

拡大【図2】見つかった惑星の分布
 ケプラーは数多くの興味深い惑星系を発見したが、統計的な意味で重要なのは、太陽と似た星のほとんどが惑星をもつ、スーパーアースと名付けられた地球の数倍程度の半径をもつ惑星が数多く存在する、の2点である(図2)。この事実に基づいて、TESSはケプラーとは異なる、「広く近くを短時間モニターする」戦略を採用した。 ・・・続きを読む
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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし)  東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第22期・第23期日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に『ものの大きさ』、『解析力学・量子論』、『人生一般二相対論』(いずれも東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『三日月とクロワッサン』、『主役はダーク』『宇宙人の見る地球』(いずれも毎日新聞社)などがある。

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