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「一弱防災」のすゝめ

東京から大阪への転勤を機会に考えた

黒沢大陸 朝日新聞論説委員

 就職や進学、転勤で引っ越しが多い春。自分も東京から大阪に異動になった。

 見知らぬ土地で住む場所を探すとき、通勤時間や買い物の便などの条件を考えつつ、災害時のことも考慮してきた。災害担当の記者を続けてきたからには、大災害のときに、自分や家族の安全確保はもちろん、被災して災害対応の戦力になれない事態は避けたい。

 いまは、ネットで防災マップを公表する自治体も多いので、地震や水害のリスクは比較的簡単にわかる。不動産物件は建てられた時期の耐震基準から地震に対する強度を推定できる。公共の建物の耐震状況を個別に公表している自治体もあるので、例えば、子どもが通うことになる学校の耐震性だって調べようと思えば調べられる。

名古屋で見落としたこと

大都市圏にはゼロメートル地帯が広がっている大都市圏にはゼロメートル地帯が広がっている

 10年ほど前、東京から名古屋に転勤が決まったときのこと。まず、自治体がつくった地震マップを調べ、地震時に揺れやすいところ、地盤が液状化しやすいところを確認した。濃尾平野はゼロメートル地帯が広がるから、高潮や洪水で水に浸かる恐れがありそうな地域も調べた。以前、東京で幹線道路沿いに住み、夜間の騒音や排ガスに難儀したことがあったから、それにも注意した。運良く、通勤に不便ではなく、高台で近くに雑木林もあって緑が豊かな閑静な場所に、家賃もほどほどの部屋を見つけることができた。

 名古屋での初出勤のとき、やはり東京から名古屋に転勤した同僚と話していると、同僚が住むことにした場所が通勤には便利だが、軟らかい地盤で地震時に揺れやすいところだった。それを指摘しつつ、ちょっと自慢げに自分の住む場所を説明すると、「あの辺はひったくりが多い地域だったと思う」と言われた。

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