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奄美・沖縄世界遺産、再推薦への選択肢

4島同時が果たして得策か、抜本的な練り直しを

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

拡大奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島=環境省「世界自然遺産の推薦概要」
 日本で5番目の世界自然遺産を目指した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(以下,奄美・沖縄遺産)は、残念ながらユネスコの諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)から「登録延期」を勧告された。4段階に区分されている勧告の下から2番目で、日本の世界自然遺産で「登録延期」が勧告されたのはこれが初めてである。これからどういう対応をとるべきか、考えてみたい。

自然遺産の登録基準は4種類

 自然遺産の登録基準は「ひときわすぐれた自然美」「地球史の顕著な見本」「生態学的に顕著な見本」「生物多様性の保全にとって重要」の4種類である。

 1993年に登録された屋久島は「自然美」と「生態系」、白神山地は「生態系」の登録基準を満たした。2005年に「生態系」と「生物多様性」の基準を満たして登録された知床では、事前に現地視察したIUCNから厳しい注文がついたが、それに応えて漁業者が自主的禁漁区を拡張したことなどが奏功した。小笠原は、2011年に「(一度も大陸と陸続きになっていない)海洋島の著しく高い固有種率と現在進行形の生物進化」が「生態系」の基準を満たすとされて登録された。

拡大奄美・沖縄世界自然遺産推薦書のうち西表島(左)と沖縄島北部(右)の推薦地,緩衝地域,周辺地域=環境省2017推薦書 より
http://kyushu.env.go.jp/naha/jhonbun.pdf
拡大

 今回、4島を一括して推薦したのは、推薦地が「かつて大陸の一部として大陸と共通の陸生生物を有していたが、大陸からの分離、海峡や海水面変化により島々が分離・結合を繰り返し、小島嶼群として成立する過程において、多くの進化系統に種分化と固有化が生じ」ており、4地域を併せると「地史を反映した大陸島における独特な種分化・系統的多様化の過程を明白に示す生態系の顕著な見本となっている」からだとした。

拡大イリオモテヤマネコ=環境省提供

 このように共通の価値を持つ複数の離れた個所を推薦することを「シリアル推薦」という。

 また、イリオモテヤマネコ、ノグチゲラ、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナなどIUCNのレッドリストに掲載されている50種以上の国際的に重要な絶滅危惧種の生息・生育地を含んでいることから、「生物多様性」の基準も満たしていると主張した。

「生態系」の価値は認められず、「生物多様性」には可能性あり

 ところが、IUCNは「生態系」については「4島は大陸島の進化過程の顕著な例を保護している構成要素を含んでいる。しかし、資産の分断等において、生態学的な持続可能性に重大な懸念があるため、推薦地は完全性の要件に合致しない」として価値を認めなかった。他方、「生物多様性」については「4島は、本地域の独特で多様な生物多様性の生息域内保全のために最も重要な自然生息地を包含している」と価値を認めている。しかし、申請した地域に問題があるとし、沖縄島北部について一部返還された米軍北部訓練場を加えることとともに、「推薦の価値を持たない不適切な構成要素」の除去を求めた。そうすれば「推薦資産は本評価基準に合致する可能性がある」と述べている。

 「資産が分断している」という問題点は、米軍返還地を加えることである程度解消するが、なお小面積の飛び地が残っており、また ・・・続きを読む
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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

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