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影はなし。光の点で時を知る日時計を作った

趣味で考案したオリジナル球形日時計、イタリアのコンテストで1位に

奥田 治之 宇宙科学研究所名誉教授

 私は宇宙科学研究所を定年退職して群馬県立ぐんま天文台の副台長をしていたころから、日時計がホビー(趣味)になった。天文教材になるという面からあれこれ調べるうち、どんどん引き込まれたのである。自分で作るようにもなり、オリジナルに考案した複合レンズを使った球形日時計は2012年のイタリア日時計コンテストでアマチュア部門で1位となった。この「風変わりな日時計」を紹介したい。

 日時計は西洋諸国ではありふれた風景として見られるのに、わが国も含めて東洋諸国ではあまり普及しなかったのは何ゆえであろうか? むしろ、日照時間ではヨーロッパなどより明らかに有利な条件を持っていることを考えると一層不思議である。日時計は、最古の科学機器(天文機器)として、人類の歴史を振り返るよすがにもなり、たとえ実用的な価値はなくなってしまったとしてもさまざまな魅力を持つ。

 公園などでよく見かける日時計の構造は簡単で、棒とそれが影を落とす場があればいい。この棒は、地球の回転軸(極軸)に平行に置くのが基本である。地上から見た太陽は、極軸のまわりを毎日一周するからだ。極軸に平行な棒を「ノーモン」と呼ぶ。

拡大名古屋市博物館の庭にある日時計。ノーモンの影でおよその時刻がわかる=名古屋市博物館提供

 名古屋市博物館には、ノーモンとそれに直角に交わる円盤でできたシンプルな日時計がある(写真右)。円盤の上半分は夜だから、目盛りは振っていない。東から上った太陽は下半分に影を落としながら西に沈むわけである。

 日時計として現在、記録に残っているもので、もっとも古いのはエジプト、ギリシャ、ローマ時代のものである。中世時代には、人々の関心が薄れたようであったが、ルネッサンス以後、様々な日時計が作られ、数多くの日時計がヨーロッパ中に残っている。日時計は、その原理が簡単なだけに、様々の大きさ、形、仕組みのものが作られて、バラエティーに富んでいる。

 私が考案したオリジナル日時計は、ノーモンがないのが大きな特徴だ。つまり、影を見るのではない。太陽の光をレンズで集め、光の点で時刻を知るという日時計である。おそらく、歴史上ほかに例がないのではないかと思う。

拡大球形レンズの周りを水で満たしたオリジナル日時計

 最初に考えたのは、球形の透明日時計だった。完全に丸いレンズを使えば、太陽の動きそのものを追うことができると気づいたのだ。しかし、ガラスレンズだと屈折率が大きく、焦点距離が極端に短くなって、シャープな焦点を結ばすことができない。そこで、周りを水でおおって全体の屈折率を下げることを思いついた。アクリルの球を作り、その中心に球形レンズを設置し、周りを水で満たすのである。

 球形日時計の外側のアクリル球の大きさは、表面がちょうど焦点の位置になるように決める。表面にある8の字形の曲線はアナレンマと呼ばれ、 ・・・続きを読む
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筆者

奥田 治之

奥田 治之(おくだ はるゆき) 宇宙科学研究所名誉教授

1935年、愛知県生まれ。名古屋大学、大学院で宇宙線物理学を研究、京都大学に移って赤外線天文観測を始める。赤外線望遠鏡を建設したほか、気球を使った銀河赤外線の観測も。1981年に宇宙科学研究所(現JAXA)に移った後は、人工衛星による赤外線観測も進めた。1991年に定年退職、群馬県立ぐんま天文台の副台長。その頃から、日時計に興味を持って、風変わりな日時計を作って遊んでいる。「日本日時計の会」会員。