壁を破る女性限定公募でイノベーションの加速を
2018年06月18日
現在、米国には約4万3千人の女性パイロットが存在し、うち約7千人が旅客機を操縦する(米国運輸省2017. 12. 31の統計)。割合としては5%弱。私自身、女性機長の便に搭乗したことは何度かある。しかし、それでも若くはつらつとした女性パイロットとシルバーグレーの初老の紳士キャビンアテンダント(客室乗務員)というコンビに遭遇した時は、一瞬、困惑してしまい、後から自分の中の「ジェンダーバイアス(性別に対する偏見)」を恥ずかしく思ったものである。
このように、男女比に極端な偏りのある職種において、たとえ悪意がなかったとしても、顧客や同業者、家族や身近な人達からの違和感や「無意識のバイアス」は、 女性のキャリア構築に大きなハードルとなる。例えば、「女性は理工系分野に向かない」とい通念(myth)は、現在の日本でもまだ根強い。過去10年の間、日本の女性研究者比率は約12%から16%と増加した(総務省統計局)が、それでも主要諸国の中で最低レベルである。また、理工系、生物系における大学教授の女性比率も依然として低い。
女子学生のキャリアパスを広げるためにも、ロールモデルとなる様々な女性教員、女性科学者が身近に存在することは重要だ。男女の格差是正を目的に、近年では多くの大学で女性優遇人事(女性限定公募)が行われるようになってきた。しかしながら、「女性の業績は男性よりも劣る。ただでさえ女性研究者の数が少ないのに、応募対象を女性に絞ってしまうと教員の質が下がってしまう」という懸念はとても強い。果たしてそうだろうか?
このような懸念には、「もう適切な人材が残っていないほど女性限定公募は多数行われている」という前提がある。しかし、 この手の議論は経験論や心象論によるところが多く、実際のデータを精査する機会は乏しい。九州大学では、2009年から今年まで10年間、「女性枠設定による教員採用・養成システム」(以下、「九大女性枠」)を推進し、昨年までにこの制度を通じて延べ48人の女性教員を採用した。これだけの数があれば、一つの大学の事例としてではあるが、それなりのデータとみて解析できる。
実際に
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