凍土壁の効果は限定的、地下水が豊富な原発敷地に増え続ける貯蔵タンク群
2018年06月15日
東京電力・福島第一原発の構内を少し高い位置から一望すると、事故を起こした原子炉建屋にもまして、林立するタンク群が目につく。汚染水を貯蔵するこれらのタンクが今なお増え続けている状況を考えると、溶けた核燃料や使用済み核燃料の処理に加えて、放射性物質を含んだ汚染水も対応を急がねばならない喫緊の課題であることが伝わってくる。
こうした取り組みが進んだにもかかわらず、汚染水がなおも増え続けているのは、周囲からの地下水が建屋内に流れ込んで内部の汚染水と混じり合い、新たに放射性物質を含むようになってしまうからだ。海に面した福島第一原発の現地は、かつて高さ約30メートルの台地だった。その台地を半分ほど削って低くした場所へ建てられた原発は、好んで地下水に近づいていったようなもの。もともと地下水は豊富で、事故前から建屋への悪影響を抑えるために地下水のくみ上げをしていたほどなのだ。東電の説明によると、現在は新たな汚染水の発生を抑えるため、「凍土壁」のほか「サブドレン」や「地下水バイパス」「フェーシング」といった地下水対策がなされている。
ここでの凍土壁とは、1~4号機の建屋を囲むように地下へ氷の壁を設けて地下水の流路を断ち、建屋への流入量を減らす対策だ。長さ30メートルほどの凍結管を1メートル間隔で地中に並べ立たせ、その中に零下30度の冷媒を流すことで地中の水分を凍らせて、連続した氷の壁をぐるりと築いていく。2014年6月に着工し、3年余りを経た昨年8月にようやく「完成」と呼べる状態に達したそうだ。
私たちは今回、4号機建屋の近くで、凍土壁を挟んで外側と内側(建屋側)に設置された地下水位観察用の井戸を見学した。まず外側の井戸をのぞくと、2メートルほど下に水面が見えた。これはそこまで地下水位が達していることを意味する。ところが少し離れた内側の井戸をのぞくと、
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