メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

国際宇宙ステーションの次は、月有人基地 <上>

ただし「月面」ではなく、まずは「月上空」が有力だ

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 国際宇宙ステーション(ISS)の建設が始まってから20年を迎え、その後継プロジェクトをどうするかが、ここ半年ほど急速に議論されるようになった。ISSの投資は膨大で、欧米ユニットだけで15~30兆円、日本ユニットも1兆円といわれ、年間経費だけでも天王星・海王星ダブル探査計画を遥かに上回る。それでも続いたのは「人類の夢」「国際協力の象徴」だからで、だからこそ、一度でも途切れてしまったら新たに同様の枠組みをつくるのは極めて困難だ。

 そのため、ISSと同等の予算規模で「人類の夢」と「国際協力の絆」となり、納税者が納得しうる現実的なプロジェクトを考える必要がある。

火星はまだ早い

 誰もが思いつく候補は月有人基地と火星有人探査の2つだろう。

拡大NASAのウエブサイトにある「探検キャンペーン」のイメージ図
 夢があるのは火星だ。何しろ火星には人類が未だに訪問できていない。国際協力で実現させるのにふさわしいと誰もが思うようで、米国のブッシュ、オバマ両政権が火星有人探査を2030年代に目指すとぶちあげたり、4年前に日本の文科大臣が宇宙関係者にまったく相談無しにこれに乗っかる談話を出したりという、リップサービスが続いた(「火星有人プロジェクトを呼びかけた日本の弱点」)。

 米国は今でも日欧を巻き込んだ夢物語を諦めてはいないし、中国も2040年代の有人探査を目指す野望を表明している。ロシアだって一番乗りの候補にあがろう(旧ソ連が経済的に崩壊していなかったら既に実現していたかも知れない)。

拡大後継プロジェクトが議論される国際宇宙ステーション=NASA提供

 だが、ポストISSは、納税者が納得しうる現実的なプロジェクトでなければならず、既に実証されている宇宙技術からスタートして、その延長で実現可能なものを目標にする必要がある。その意味では、火星有人計画は「挑戦」の意味合いが強すぎる。膨大なコストの他にクリアしなければならない技術的課題も多数ある。

 となると、現実的なのは月基地だ。実際、この半年ほどは、月基地の利用価値について、日米欧の宇宙機関や科学者に意見を募っている。それはISSが生まれる前後にあったものと同様のトップダウン方式の意見公募だ。科学者に降りてくる公募は観測・実験案だ。私も欧州宇宙機関(ESA)公募の観測・実験案の2つの提案チームに参加している。普通の科学ミッション公募が「科学的に極めて重要な価値がある観測項目」を先に決めて、その観測に最適の軌道を提案するボトムアップ方式であるのとは対照的だ。それがExplorationとInvestigation(いずれも「探査」と訳する)の違いだろう。

月面より有利な月上空

 さて、月基地といえば多くの人が月面基地を夢想するだろう。ところがである。月面ではなく月上空に作る案が出ており、そちらのほうが有力そうなのだ。

 月面は月の重力に対抗して着陸・発射するのに膨大な燃料が必要で、事故のリスクも大きい。グーグルの月面探査レース「ルーナーXプライズ」が未達成なのは、Xプライズ側が月着陸の困難を甘く見ていたからだ。 ・・・続きを読む
(残り:約1411文字/本文:約2642文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

山内正敏の新着記事

もっと見る