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猛暑の原因に関する3つの誤解 【再掲】

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 今年も猛暑が止まりません。18日には2013年以来の40度超えを記録。熱中症の症状で搬送される人もうなぎ登りで、命を落とす人も止まらない。しばらくは記録的な暑さが続くようですが、なぜ、こんなに暑いのでしょう。ただ、猛暑の原因については、幾つか誤解があるようです。2013年の記事を再掲します(WEBRONZA編集部)。

※以下は、2013年8月12日公開のWEBRONZA記事

 日本の夏は年々暑くなっている。私の子供のころの記憶では、45年前は30度を超える日を暑いといった。そしてクーラーどころか扇風機なしで十分に仕事も勉強もできた。しかし今は35度を超える日を暑いと呼び、クーラー無しだと熱中症にかかる人がでる。もはや自然科学の問題を越えて、対策を真面目に考えなければならない社会問題となっている。

 日本の夏の高温化の主な原因は、取り沙汰されることが多い地球温暖化ではなく、ヒートアイランド現象にある。そこで9年前にヒートアイランド対策大綱が策定され、気象庁の専用ページができた。つい1カ月ほど前には、国土交通省も専用サイトを開設した。

 しかし、対策はあまり進んでいない。最大の理由は、ヒートアイランドが正しく理解されていない点にあると思う。そこで本稿では「猛暑の原因についての3つの大きな誤解」を説明したい。

(1)猛暑の主因が地球温暖化だという誤解

図1:年平均温度の推移。各年毎に前後5年合わせた計11年分の平均値をプロット。データは気象庁提供(http://www.data.kishou.go.jp/climate/index.html)。戦後急速に都市化した7都市平均(札幌、横浜、名古屋、神戸、広島、福岡、鹿児島)も紫色で加えている。17世紀から1980年頃までの平均気温の変化は、太陽活動(黒点周期での積分量)とよく相関していることが20年前に発見されている。しかし、1990年代以降は、この相関から外れるようになった。

 図1に世界の平均温度の推移を示す。1970年までの平均気温の変化は、南北両半球とも同じで、海水面温度の変化とも同じだ。主に太陽活動や火山活動に起因する変化と考えて良い。一方、最近20〜30年は北半球の上昇率(0.6度/30年)が南半球や海洋の上昇率(0.3度/30年)を大きく上回っている。更に日本では、都市化の少ない17地点の平均(0.8度/30年)ですら北半球平均の上昇率を越え、都市部だと1.3度/30年と南半球の4倍のペースだ。つまり日本だけで、南半球平均や海洋平均の温度上昇を大幅に越える「日本列島地域の極端な高温化」が進んでいる。

 しかも、これらのデータの元となる気象観測では、建物からの放熱などの人為原因が極力排除された「涼しい場所」での測定を使っている。そこですら、これだけのスピードで高温化しているのである。南半球の平均上昇率が地球全体の温暖化によるものと考えてこのデータから計算すると、都市部の生活空間における温度上昇は9割がヒートアイランドによるものになる。地球温暖化の影響に比べて、ヒートアイランドの方が圧倒的に大きいのである。

(2)人間が使うエネルギー(廃熱)が主因であるという誤解

 太陽光の入射エネルギーは夏場で1000ワット強/平方メートルであり、それに対して、

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