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「地方創生」で300年来の難問は解決できるか

江戸幕府も悩んだ一極集中、眠っているお金と有能なプロデューサーの手腕を生かせ

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 来年度の政府予算案で、焦点の「地方創生」に7200億円を投入することが決まった。自治体が自由に使える財源を増やして、「ひと・まち・しごと」を活性化するよう地方の奮起を促す。焦らず長い目で成果を期待したい。

 注目したいのは、東京と地方の間の人口の転入・転出に関する数値目標である。東京から地方への転出者を2020年までに4万人増やす一方、地方から東京への転入者を6万人減らし、転入・転出とも41万人でバランスさせるという内容だ。

 現在は東京への転入者が多い分、地方は人口が減って活気を失う。活気がなくなれば、若者はますます東京に出てゆく。そこで地方から都会に来ている若者を地方に呼び戻すなどして、悪循環を断ち切ろうというわけだ。

 上手くいくだろうか。一つ言えるのは、この人口の一極集中の是正は大変な難問だということだ。その昔、江戸幕府も同じように江戸への一極集中を何とかしたいと、「帰農令」や「人返し令」を出したが、結局、みじめな失敗に終わっている。

 天保14年(1843年)のある日、幕府領を治める代官たちが江戸に召集された。「天保の改革」を主導する老中・水野忠邦からの諮問により、江戸への流入問題と地方振興策を話し合うのが目的だった。

 このころ農村はたびたび飢饉に見舞われた。食えなくなった農民は逃亡して江戸に大量に流入した。逆に農村では幕府の財源であるコメの収量が大きく落ち込んだ。つまり江戸への一極集中は、農村の荒廃と背中合わせになっていた。

 そこで水野は、江戸にいる農民を強制的に地方に返す「人返し令」を発令した。江戸の人別改めを徹底して行い、

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