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元気な東大、沈滞のソウル大、金力の清華大

大学発ベンチャーの実力を比較する

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

ベンチャー成功者がエンジェルに回る好循環

 世界景気の長期停滞が予測される中で、イノベーションの担い手として大学発ベンチャーへの期待が高まっている。育成に力を入れる日本、韓国、中国が目標とするのは、シリコンバレーの中心に位置するスタンフォード大学だ。むろん、3国とも現状はその足元にも及ばないが、ここ10年ほどの間に各国の力の違いが際立ってきた。

 東大ベンチャーとして有名な「ユーグレナ」(出雲充社長=写真)は昨年4月、金融機関などと共同で次世代ベンチャーを支援するファンドを設立した。ベンチャーで成功した企業や経営者が、今度はベンチャーを支援する側(エンジェル)に回るという好循環が、ようやく生まれた。

ユーグレナ・出雲充社長(同社ホームページより)ユーグレナ・出雲充社長(同社ホームページより)

 本欄の執筆者の鎌田富久氏(TomyK.代表)は、東大理学部在学中にIT企業を創業し、2011年に50歳で退任した。今は自分の経験をもとに、ロボット、宇宙、生命科学、人工知能など東大ベンチャー10社を資金面で支援するエンジェルとして活躍中だ。

 鎌田氏は「いま社会的なイノベーションが望まれているが、大企業は動きが遅く、ゼロから新しいモノを生み出すことができず、限界が来ている。その点、ベンチャーはITの発達で起業のハードルが低くなった。日本発で世界初になるようなキーテクノロジーを育てたい」と、現状打破への期待を語る。

株式公開した東大ベンチャーの時価総額は1兆円に迫る

新緑の東大キャンパス(東大ホームページより)新緑の東大キャンパス(東大ホームページより)

 東大は2004年の国立大学法人化を機に、ベンチャーに出資するファンドや、大学の特許を産業界にライセンスする組織を設立した。さらにベンチャー志望の学生向けに「アントレプレナー道場」を開き、毎年200人以上が参加するまでになった。

 その成果が今、次々と出ている。

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