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[10]「不育症」――低い認知度、少ない専門医

横田由美子 ジャーナリスト

「不妊」と「不育」の違い

 前回の原稿では、「不育症」で4回の流産をしたミカさんのケースをお伝えした。実はこの取材は、彼女からのメールを受け取って実現した。

 前述したように、不妊治療を受けている友人に、

 「妊娠するだけいいじゃない」

 と、言われたことから、もっと「不育症」について知って欲しいと考えたからだという。

 「彼女も辛かったとわかるから、私も言い返せなかった。苦しみは違っても、赤ちゃんを抱けないという意味では一緒のはずです」

 と言って、ミカさんは眉間に皺を寄せた。

 杉ウイメンズクリニック(神奈川県横浜市)の杉俊隆院長は、「不妊症の女性が不育症の女性にぶつける言葉として、非常によくあるケースだ」と、前置きした上で、次のように推測する。

「不育症学級」で治療について話す杉ウイメンズクリニックの杉俊隆院長。治療費を助成する自治体が増えている=15日、横浜市「不育症学級」で話す杉ウイメンズクリニックの杉俊隆院長=2011年、横浜市
 「不妊の患者さんにとっては、『妊娠する』こと自体が、奇跡的なことに思えて、最大のハードルなのでしょう。だから、そのハードルを越えることのできる不育症の患者さんの方がゴールに近いと考えてしまうのではないか」

まだ研究段階の診療

 一般に、「不妊」は「妊娠しないこと」、「不育」は、流産や死産を繰り返すなど「妊娠はできるけれど、出産に至らないこと」と分類されている。

 おのおの「苦しみの深さ」に違いはないはずだが、決定的に異なるのは、不育は

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