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志布志うなぎ少女CMで見えた差別の根深さ(上)

市役所の感覚は「少女=養殖」なのですか?

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 先日、日本のとある南の町の名が世界のメディアを駆け巡りました。その町の名は鹿児島県志布志市。

 うなぎをふるさと納税返礼品としている同市は、ふるさと納税の増額を目指してPRしようと、うなぎをスクール水着の少女で擬人化したCMを作成しました。その内容が「いやらしい」「女性差別だ」「小児性愛者の監禁を表現している」「カニバリズムを連想させる」と多くの批判を浴びて、抗議のメールや電話が殺到した結果、削除する事態になったのです。

鹿児島県志布志市が削除した、ふるさと納税をPRする動画=ユーチューブから鹿児島県志布志市が削除した、ふるさと納税をPRする動画=ユーチューブから

 その様子はフランスのAFPイギリスのガーディアンBBC等、様々な海外メディアが「多発する日本の性差別問題」として報じる結果になりました。AFPは通信社なので、この記事をもとに様々な海外メディアが派生記事を書き、志布志市の名が一気に世界中に拡散されました。アメリカ外交政策研究の専門誌である「フォーリン・ポリシー」もこの問題を報じ、「性差別ホラー映画」というタイトルで騒動を紹介しています。

 養殖しているうなぎを人間の少女で擬人化する設定はもちろんのこと、特に問題となったシーンが、男性ナレーターに対してスクール水着の少女「ウナ子」が物欲しげなあどけない表情で「養って」というシーンでした。

 また、少女の顔に水をかけたり、少女がフラフープをする等、実際に児童ポルノまがいで出回っているイメージビデオにおける定番シーンに類似した描写が続きます。うなぎという設定であるために、手がぬるぬるしてペットボトルがなかなか掴めないという描写もあり、ローションと思われるようなねばねばした液体も表現されていました。

 さらに、「さよなら」と言った少女はうなぎの姿に変化しますが、その直後にうなぎのかば焼きのシーンが入ります。これにはカニバリズムを連想させるとの批判が寄せられていました。そしてラストでは、少女よりもずっと幼い新しい少女が出てきて、「養って」というシーンで終わるのです。

納得できるはずがない市の“言い訳”

 志布志市のCMは、「飼育」と銘打つような「女性監禁ポルノ」の文脈をくっきりとなぞって描かれた内容であり、公的機関の広報として明らかに不適切だったと言えるでしょう。実際、最近も埼玉県で女子中学生の監禁事件が騒がれましたが、公的機関が監禁に見えるような描写を肯定的に描くことは許されるはずがありません。

 もともと、Youtubeにアップされていた動画のタイトルは「少女U」でした(インターネット上で批判が増えたのちに、「UNAKO」に変更しています)。起用された女優は20歳とのことですが、制作サイドが「少女」という想定で作っていることは動画の内容からして間違いないでしょう。

 各種報道によると、「性的な意図は無い」「ただ、うなぎをアピールしたかっただけ」と志布志市の担当者は話しているようですが、上記の内容を見てその発言を信じる人はあまりいないのではないでしょうか?

 実際に、Youtubeの説明文の冒頭部分には、『物語は、真夏のプールで、一人の美少女と出会うところからスタート。彼女は画面(あなた)に向かって、「養って・・・」という刺激的な言葉を放ちます。』と書かれています。「刺激的」という言葉を使って形容しているところからも、確信的に性的な表現をしている様子が感じ取れます。

志布志市の感覚は「少女=養殖」なのか?

 第1回の今回は、この動画のどこが問題だったのかを詳しく見て行きたいと思います。

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