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女子トイレの待ち時間は経済的損失である

トイレ先進国として更なる進化を期待する

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

トイレに併設されたラウンジ。週末は大勢の人でにぎわうという=東京都渋谷区の渋谷ヒカリエ東京・渋谷ヒカリエのトイレに併設されたラウンジ。週末は大勢の人でにぎわうという=2015年

 前稿「トイレは『男性・女性・その他』3分割の時代へ」ではセクシャルマイノリティーに関するニーズの問題に関して触れましたが、現状の公共トイレが細かなニーズに対応できていないというのは、何もセクシャルマイノリティーの問題に限りません。

 もちろん政策的に順序付けをすれば、人権問題であるセクシャルマイノリティーの問題が最重要課題の一つであることは間違いないと思いますが、現状の男女二元論の発想がいかに個人のニーズに対応していないかを改めて認識する必要があるように思うのです。

 たとえば、近年、男子トイレにもベビーチェアや子供用のトイレが備え付けられる公共スペースが増えてきましたが、依然として無いところも少なくありません。これは「子供は母親が面倒を見るもの」という性に対する偏見から来ている問題です。先日も、とある屋外のトイレで、父親が「こっちには無いわー! そっち(女子トイレ)入れないから来て!」と妻に叫んでいる光景を目にしました。

 また、私は日焼け止めやBBクリーム、場合によってはアイライナーを塗って外出することが多いのですが、塗り直しの際に使いたい化粧鏡(前に洗面台が無く、物が置ける台のある鏡)が、男子トイレには無いことに大変不便を感じています。

 確かに、近年男子トイレに化粧鏡を設置する施設も出てきてはいるものの、依然として圧倒的に少数です。一方、女子トイレのパウダールームが進化しているニュースを見るたびに、羨ましく、女子トイレを使いたいと思ってしまいます。実際に使うことはもちろんありませんが、「男性はパウダールームを利用しない」という世の常識に対して落胆を感じざるを得ないのが本音です。

 私は一応シスジェンダー(身体的な性とアイデンティティーの性が一致している状態)ですし、別に女装をしているわけでもありません。あくまで個人として、かつ美容の一環としてそのようなメイク道具を用いているわけですが、これもある種の“マイノリティー”であり、性に対する偏見ゆえにニーズが認知すらされていないケースの一つと言えるでしょう。

女子トイレの待ち時間問題は経済的損失である

 そして何よりニーズに対応できていない最たる例は、待ち時間の男女差でしょう。男性トイレが全く並んでいないのに、女性トイレだけズラっと列をなしていることは少なくありません。男性でも女性と一緒に行動している時に、自分だけ早く済んで時間を持て余すという経験をした人も多いはずです。

 男性トイレがあまり並ばないのは、言わずもがな身体構造的な要因のためです。男性の小用は立位のままで行えるために短時間で済みますし、小便器であればパーテーションが不要ということもあって面積当たりの配置数を多くすることができます。そのため、男性のほうが「回転率が高い」という構造にあります。

 このような状況を当たり前と思っている人も多いでしょうが、この渋滞は、とても非効率な状態です。飲食店にたとえるならば、

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