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インターフェースは、単純な進歩はしない

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

パソコンからキーボードが消える日は、とっくの昔に過ぎ去り、消えるキーボードは消え、残したいキーボードは残っている。そして、パソコンとはどこからどこまでを指すのか、キーボードとはどこからどこまでを指すのか、すらも、もうよくわからない。とある最近の全国調査(年代や地域で「日本人の縮図」を再現したもの)では、「スマートフォンに似ているものは、パソコン」という回答が6割以上を占め、「……似ているものは、携帯電話」という回答は2割に過ぎない。タブレットPCは、名が現すとおりである(だからたとえばNTTドコモは「PC」をつけず「タブレット」と呼んでいる)。

 パソコンという商品体系の中にキーボード(ボタン)以外のインターフェースを導入したのは、ベル研究所での試作機を見てアイデアを応用してマウスを標準搭載した、アップル創業者スティーブ・ジョブスと言われている。ソフトウェアキーボード機能はだいぶ前のパソコンから存在し、マウスだけでも文字は打てる。その時点ですでにキーボードが消える技術的準備は完了した。

 一般市民目線ではタブレットPCやスマートフォンがソフトウェアキーボードを一般化させたように見えるかもしれないが、それはJISキーボードをもっと便利な筆記用具としている人たちへの過渡的な措置に過ぎない。キーボードが消えるか否かを論じる必要があるのは、JISキーボードの習熟度の高い人が、いまWebRonzaを読むような世代にたまたま多いだけだ。信頼に足る規模の調査データは見たことがないが、スマートフォンでの文字入力はJISキーボードソフトよりもテンキー入力(ボタン押下回数の代わりに複数選択肢が一覧表示されるソフトを含む)のほうが圧倒的に多いように見える。「ガラケーのテンキーのほうが

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