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プロ野球選手の大リーグ行きは正解だろうか?

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 2012年末、日本を代表するスラッガーだった松井秀喜外野手(38歳)が、日本で10年、そして大リーグ(MLB)で10年、合計20年の選手生活の終了を表明した。もう一人の花形選手、イチロー外野手(39歳)はニューヨーク・ヤンキースとの間で2年の再契約を結んだが、本俸が約1700万ドル(約15億円)から約650万ドル(約5億8000万円)と3分の1近くまで減額となった。年齢的にもイチロー選手にとってMLB最後の2年間になる可能性が高い。ところが、MLBで偉大な足跡を残した二人を引き継ぐ日本人の野手が見当たらない。

 これまでの実績から判断すると、日本人の内野手や外野手がMLBで日本と同じような成績を残して活躍するのは、イチローを除けば極めて難しいようだ。一つの例として松井秀喜の日本のプロ野球とMLBのそれぞれ10年間の通算成績を比較してみる。

試合数/安打/本塁打/打点/打率

プロ野球通算 1268/1390/332/889/.304

MLB通算 1236/1253/175/760/.282

 注目すべきは本塁打と打率だ。日本でも統一球が導入されて本塁打が減った。松井は渡米直後から日米のボールの飛距離の違いを体験していたことになる。日本で本塁打王を3回獲得した松井でもMLB在籍中のシーズン最多本塁打は31本。日本で年間40本以上の本塁打をコンスタントに打つことができる強打者でなければMLBで本塁打王を競うことが難しいことを示唆している。

 打率も2分余り落ちている。年間試合数が多いため、打率が下がるのはやむを得ない。このことは、日本で平均して3割2分以上の打率を残さなければ、MLBで3割打者の仲間入りは難しいことを示唆している。これはそう簡単なことではない。

 現に、日本では一流選手と目された、松井稼頭央、岩村明憲、西岡剛は期待外れに終わったと言えるだろうし、福留孝介外野手も5年間の通算成績が2割5分8厘。日本で首位打者の経験があるとは思えない並みの成績だった。

 投手も野茂英雄と同等もしくはそれ以上の成績を残す選手が現れない。井川慶は全く存在感がなかったし、最も期待が高かった松坂大輔は契約期間の6年を終えて、今季のMLB残留がまだ確定していない。2012年度のダルビッシュ有は合格点だったが、総合的評価はこれから。今年度を含め、暫く様子を見る必要がある。

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で連覇している日本のレベルが高いことは周知の事実だが、冷静に考えれば、日本で1度首位打者のタイトルをとった程度の実績を引っさげてMLBに行っても、そう簡単に問屋を卸してくれないことは容易に理解できる。

 なぜなら、日本と違って、MLBは30球団の集合体で競争の激しさが違うからだ。メジャーリーガーと呼ばれる選手の総数は1200名。そのうち、

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