公明党本部の意向で方針転換され実現が決まった5月17日の大阪市民の住民投票で
2015年03月27日
大阪市を五つの特別区に分割する「大阪都構想」の制度案(協定書)が、大阪府、大阪市の両議会で可決された。5月17日にある大阪市民の住民投票で、都へ移行するかどうかが決定する。都構想を実現するために政治家になった橋下徹大阪市長が勝つのか、徹底して反対してきた自民党など各党が勝ち、6年ごしの政争に終止符をうつのか。攻防は最終章をむかえた。
2月21日。晴れ間が広がった土曜日のお昼どき。大阪市のベッドタウン・京阪寝屋川市駅の駅前には数百人の聴衆が集まっていた。
住民投票を3カ月後にひかえ、橋下氏が、毎週土日に開いているタウンミーティングだ。
松井一郎知事に続いて到着した橋下氏が車の上にあがる。聴衆から拍手がおこり、写真を撮る音があちこちから聞こえる。大半が60代以上だ。
橋下氏は笑顔のなかにも決然とした様子でマイクを握った。
「みなさん、いよいよ4月に府議選と市議選、そして5月17日に大阪市では住民投票があります。僕らがこの5年、6年言い続けてきたことの総決算です。府民のみなさんが、僕らを後押ししてくれるかどうか。すべて決まるのがこの春なんです」
そして話は得意のカネの問題へ。
「国会議員はでたらめです。消費税が上がり、年金は下がったのに、国会議員は月25万円給料を上げました。月25万円ですよ。年金でいったら何カ月分ですか」
「そうだ!」とかけ声が飛ぶ。
「大阪市議会もひどいですねー。自民党、民主党、公明党、共産党、自分たちの給料、ぽーんと月10万円あげました。年120万円です」
そして、維新の会がそれに猛反対したことを強調し、「まずは議員の給料をさげよう。公務員改革をしよう。その上で足りなかったら国民に負担をお願いします」
「わーっ」と万雷の拍手がわいた。
続いて説明用のパネルをかかげ、府と市が競い合うように似た施設をつくってきた問題、市が地下鉄や高速道路の路線まで決めてしまうことのおかしさを指摘、二重行政をなくせばお金は生み出せる、と力説した。
さすがの弁舌テクニック。とはいえ、聴衆が大きくわいたのは、議員の給料やむだの排除といった、わかりやすいお金の話のときだけだった。しかも市議の給与は、演説後の条例改正で引き上げが回避されている。
この日初めて橋下氏をナマでみたという60代の主婦は、「やっぱり元気あるわあ。力がみなぎってはるかんじ」と興奮げに話した。都構想についてたずねると「それも大事やわなあ、ははは」といった後、沈黙して去った。70代の男性は「あんたらは橋下さんを批判するやろ。わしゃ許せん。帰れ!」。
質問しただけで機嫌を損ねてしまった。
住民投票が近づいた今でも、結局は橋下氏個人への好き嫌いが都構想への支持不支持に直結するという、当初からの構図がかわってないように思える。
もちろんよく勉強している市民もいるだろう。だが、総じて橋下氏を支持する人は、制度の中身がわかってもわからなくても都構想に賛成、嫌いな人は中身はともかく反対という傾向が強い。
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維新以外の各党も各地で集会を開き、反都構想キャンペーンを繰り広げている。しかし維新に比べて人の集まり具合はいま一つだ。
自民党大阪市議団の柳本顕幹事長は「うちは橋下さんみたいな人寄せパンダ的な人がいませんから。でもじっくり話を聴いてもらっています」と言う。
同党は1月以後、6週間にわたり、24区すべてで街頭演説をひらいた。
「大阪都構想」という言葉を使わないでほしい--。
2月23日、こんな文書がマスコミ各社に届いた。出したのは自民党大阪府連。
文書は「大阪都構想という言葉は大阪維新の会が使う政治用語
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