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1年で退任した伊東強化委員長の不可解な陸連人事

快挙後間もなくの衝撃と不透明さ、スポーツ団体はガバナンスの再点検を

増島みどり スポーツライター

 何とも皮肉な結末である。

 誰よりも「歴史的な更新」を待ち望んで力を注いだはずの強化委員長は、19年もかかってようやく自らの日本記録(10秒00)が更新されたのとほぼ同時に、わずか1年間で強化委員長の任務から離れる事態になってしまったのだから。

9秒98の日本新記録を出した桐生祥秀選手(左)と笑顔で握手する伊東浩司・日本陸連強化委員長=2017年9月9日、福井市9秒98の日本新記録を出した桐生祥秀選手(左)と笑顔で握手する伊東浩司・日本陸連強化委員長=2017年9月9日、福井市
 日本陸連が都内のホテルで華やかな年間表彰式(12月19日)は本来ならば、日本陸上界全体の悲願でもあった百メートル9秒台(9秒98=桐生祥秀)が樹立された喜びを選手、関係者が分かち合う場になるはずだった。

 しかし当日、昨年9月、東京オリンピックを目指して新たにスタートしたばかりの伊東浩司強化委員長(47=甲南大教授)が退任すると報道され、関係者は報道陣と接触しないよう、コメントを求められるのを避けるためにホテルの会場を足早に通過。パーティーとは無縁の、ピリピリとした緊張感が漂う会場に変わってしまった。

 表彰式前に行われた理事会では、理事をも辞任した伊東氏欠席のまま、12月10日にあったとされる辞任の申し出を承認。報道陣にブリーフィングした尾県貢・日本陸連専務理事は、ファイルから書類を取り出すと「伊東委員長から預かっています」と紙を読み上げた。

  1 勤務する学校法人が19年に創立100周年を迎えるなど多忙で、学務との両立が難しくなった

  2  2017年夏のロンドン世界陸上で、男子400メートルリレーが昨年のリオ五輪に続くメダル(銅)を獲得。また桐生の9秒98で日本人初の9秒台という課題をクリアしたことで、強化に一区切りつける実績をあげた

  3  一歩引いた立場から東京五輪後も視野に、状況を観察し強化に貢献したい

  尾県専務理事から3点が辞任の理由と伝えられると

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