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国民が面白く見られればすべてうまく回る同時配信

総務省の諸課題検討会 NHK番組のネット同時配信をめぐる慎重すぎる前進

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 
 「放送を巡る諸課題に関する検討会」第二次取りまとめ(案)が公表され、さる7月19日からパブコメ(意見募集)を行っている。かれこれ3年近い時間を費やしながら、要するに「NHKはテレビ番組の同時ネット配信をしてよいか」を関係者で合意形成するための会議を積み重ねているようだ。

 すでに2016年9月に集約された第1次とりまとめに対して否定的な立場の民放連の言説に配慮して、NHKの当該事業予算上限、市場性や会計面の事後チェック、地域情報発信の義務、などの制限を設ける約束事が盛り込まれている。

 総じてNHKの足かせを増やすことによって民放連ほかネット配信事業者との合意という点では少々の前進をしているように見える。合意形成とりわけ実質的な官民の合意には時間が必要で、行政の無駄だという批判はあたらない。

 国民・視聴者不在なのかというとその批判もあたらない。決められようとしていることは、「見たい番組が見られれば端末は(当然回線種類も)何でもいい」に尽きる視聴者ニーズに向かっていることは間違いない。

 たしかに2005年くらいまでは、技術論やビジネスモデル論が先走り、いくつかのやんちゃなインターネット技術応用ビジネスが勃興しては消え、それらは国民的な関心事とは言い難いものだった。

スマートフォン(手前)に同時配信されたサッカーW杯韓国-ドイツ戦。テレビと数十秒のタイムラグがあった=2018年6月28日スマートフォン(手前)に同時配信されたサッカーW杯韓国-ドイツ戦。テレビと数十秒のタイムラグがあった=2018年6月28日
 しかし、もはやインターネット接続端末を70代の高齢者が使いこなし、テレビ端末の技術的な高度化は高精細(結果として大画面が可能)しか求められていないこともはっきりし、ビデオ録画によるタイムシフト視聴を視聴率データに組み込んで比較分析と広告取引が行われるようにもなった。
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