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「紫のオランダ」と多極共存型民主主義の試練

川村陶子

川村陶子 川村陶子(成蹊大学文学部准教授)

 オランダの色といえばオレンジだ。サッカーワールドカップでは、オランダチームの快進撃とスタジアムを埋め尽くすビタミンカラーが重なり合い、日本の私たちにも強い印象を残した。「オレンジの祭り」が終わったいま、オランダのメディアでは、別のある色が話題になっている。

 その色とは、紫だ。6月9日に行われた下院選挙で第1党になった自由民主党と、第2党になった労働党の、それぞれシンボルカラーである青と赤のコンビネーションの色が紫。すなわち「自民・労働連合」を表している。

 総選挙では上位4党の得票率がそれぞれ20.5%、19.6%、15.5%、13.6%と割れ、少なくとも3つの政党が連立を組まない限り、議会の過半数を占める政権が作れない結果となった。多党制の国オランダでは、政府は連立政権が当たり前なのだが、今回の選挙は連合政治に慣れたオランダ人にも頭の痛い結果となっている。第3党になったのが「反移民」「ムスリム排斥」を掲げる自由党だからなおさらだ。

 へールト・ウィルダースが率いる自由党は、150議席中24議席を獲得して大躍進し(改選前は9議席)、マスコミでは「総選挙の最大勝者」と報道された。ウィルダースは自民党と自由党、第4党になったキリスト教民主党の三党連合政権を求めたが、キリスト教民主党がこれを拒絶し、現在は「自由党抜きでいかに多数派政権を構築するか」が連立交渉の軸になっている。その結果、「紫」の2党が次期政権の中軸になることが展望されている。

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